大九明子、瀬田なつき、枝優花、松本花奈が痛快に描く 『あのコの夢を見たんです。』の妄想世界

 そんな本作の演出を担当しているのが、新作『私をくいとめて』の公開が待ち遠しい大九明子、間もなく『ジオラマボーイ・パノラマガール』が封切られる瀬田なつき、『少女邂逅』(2018年)で世間を驚かせ、ドラマ、MVでもその才能を開花させる枝優花、『キスカム! COME ON, KISS ME AGAIN!』の松本花奈ら、注目を集める映画監督陣。全員女性である。これまでに放送された、シチュエーションもタッチも異なる3つのエピソードはどれも楽しいものだった。ついつい笑いがこみ上げてきたり、キュンと切ない気持ちになったり。しかし視聴後に、何かモヤモヤとしたものが残る。これは何だろう?

 振り返ってみると、「中条あやみ回」は視点を転換させることによって、“美女を振る”ということに興奮を覚える女性蔑視的な男の浅ましさが透けて見えたし、「芳根京子回」はヒロインが“勇者≒アイドル”として祭り上げられ、アイデンティティの所在に悩む姿が見て取れた。「森七菜回」は、主人公がヒロインに振り回されているのではなく、“さえない僕”にとって都合の良い幼なじみがヒロイン(=悲劇のヒロイン)だというものに思えるのである。

 本作はユーモラスな物語や演出で、表向きはコメディタッチのノリではあるが、女性を「消費するモノ」視している感じはどうにも否めない。これがモヤモヤしてしまう理由なのだろう。表向きが愉快な仕上がりの作品なだけに、主人公の言動はより滑稽で、女性たちの振る舞いがそれを批評的に浮き彫りにしているように思える。あくまで楽しい“妄想ドラマ”でありながら、もう一歩踏み込み、結果的に楽しい“妄想ドラマ”にとどまっていない。ここに、いま読み取るべきメッセージがそっと込められているのではないだろうか。

 第4話は「飯豊まりえ回」で、演出を務めるのは枝監督。そして、大九監督と瀬田監督の担当回はまだこれから。果たして何をしかけてくるのか。“愉快”を超えた“痛快”なものが、そこには待っていそうだ。きちんとモヤモヤしたいものである。

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

■放送情報
ドラマ24 第60弾特別企画『あのコの夢を見たんです。』
テレビ東京ほかにて、毎週金曜深夜0:12〜放送
※テレビ大阪のみ、翌週月曜深夜0:12〜放送
原作:『山里亮太短編妄想小説集 あのコの夢を見たんです。』(東京ニュース通信社)
出演:仲野太賀、中条あやみ、芳根京子、森七菜、飯豊まりえ、大原櫻子、山本舞香、大友花恋、白石聖、鞘師里保、池田エライザ
監督:大九明子、瀬田なつき、枝優花、松本花奈
脚本:政池洋祐、マンボウやしろ、三浦希紗、野村有志
脚本監修:山里亮太(南海キャンディーズ)
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:倉地雄大(テレビ東京)、和田圭介(スタジオブルー)、瀬島翔(スタジオブルー)
制作:テレビ東京、スタジオブルー
製作著作:「あのコの夢を見たんです。」製作委員会
(c)「あのコの夢を見たんです。」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/anoyume/
公式Twitter:@tx_anoyume
公式Instagram:@tx_anokonoyume

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