妻夫木聡の突出した巻き込まれ力 『危険なビーナス』は一風変わった兄妹の関係を描く 

 原作では、伯朗は楓とともに親族会に出席する。ドラマでは、伯朗は楓と一度仲たがいしてから、楓が兼岩家へ謝罪に行ったことを知り、楓の後を追って矢神家の親族会に出席するなど、伯朗が楓を助ける動機を強化している。「僕は守られているだけで、何もできなかった」と述懐する伯朗が「お前が母さんを守ってくれる存在となった。今度は俺が守るよ。お前の嫁を」と明人に誓う場面は、兄弟愛とともに物語の対立軸を示すもので効果的な脚色だった。

 運命の出会いから一転して骨肉の争いへ。放送前は「ラブサスペンス」という触れ込みだった『危険なビーナス』は、伯朗と楓のバディ要素や名家の因縁を織り込みつつ、禎子の死をめぐるミステリーや牧雄が関心を寄せる脳科学などのサブジャンルを含んでいる。ドラマオリジナルの要素をはらみながら、一風変わった兄妹の関係を描く本作は、はたしてどちらの方向に進んでいくのだろうか?

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
日曜劇場『危険なビーナス』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:妻夫木聡、吉高由里子、ディーン・フジオカ、染谷将太、中村アン、堀田真由、結木滉星、福田麻貴(3時のヒロイン)、R-指定(Creepy Nuts)、麻生祐未、坂井真紀、安蘭けい、田口浩正、池内万作、栗原英雄、斉藤由貴、戸田恵子、小日向文世
原作:東野圭吾『危険なビーナス』(講談社文庫)
脚本:黒岩勉
プロデューサー:橋本芙美(共同テレビ)、高丸雅隆(共同テレビ)、久松大地(共同テレビ)
演出:佐藤祐市、河野圭太
製作:共同テレビ、TBS
(c)TBS

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