松井玲奈、二階堂ふみ、森七菜『エール』関内家の三姉妹が再会 戦時下の不協和音

 朝ドラ『エール』(NHK総合)の第78話は、豊橋で馬具づくりの修行をしているはずの五郎(岡部大)が、裕一(窪田正孝)の前に現れる。

 修行の集大成であるテストに合格すれば梅(森七菜)と結婚することが決まっている五郎は、鍛錬を積んできたがテストの際にプレッシャーがかかり、なかなかうまくいかないと嘆き、自信を失いかけていた。

 そこにムスッとした怒り気味の面持ちで梅も五郎を追いかけるように古山家にやってきた。どうやら梅は結婚するのが嫌になったから、五郎がわざとテストに落ちていると勘違いしてしまっていたらしい。

 そんな勘違いがなくなってすぐに仲直りする2人が何とも微笑ましい。心なしか、梅は雰囲気が柔らかくなったように見て取れた。

 かたやで、本格的に戦時色が強まってきていることもあり、音(二階堂ふみ)が開いていた音楽教室は生徒が弘哉(山時聡真)だけに。しかし、彼も教練の関係で忙しくなっていた。音のことに気を遣って通っていた弘哉であったが、それを知った音は弘哉の優しさに感嘆しながらも、気を遣わせることはよくないとついに閉めることを決意した。

 するとお礼をと古山家に訪れた弘哉の母・トキコ(徳永えり)と弘哉が、かぼちゃを持ってきたので、それを一緒に食べることに。華(根本真陽)が弘哉に好意を寄せていることを知る裕一は、2人が仲睦まじくしている様子を見ては、その間に割って入っていく大人げない一面も見せる。これも華への愛情ゆえの行為で微笑ましい。

 そして、久しぶりに関内家の三姉妹が揃うことになった。ただし、時代が時代であることもあり、話は次第に戦争に関してのことに。戦争に向けて一致団結をしなくてはいけないと訴える吟(松井玲奈)と、そこに違和感を抱きながら音楽挺身隊への誘いを悩んでいる音、そして小説家として芸術に勤しんでおり多様性を重んじることが優先すべきだと訴える梅の、戦時下における三者三様に触れられた。

 音と梅の気持ちはもちろん間違っていないのだが、当時の日本ではそれが通用しなかったことが何とも悲しい。音楽挺身隊に参加することを決意して、裕一に相談することになった音。戦争一色となりゆく日本当時の面影を残しながら、裕一と音もその戦争に呑み込まれていこうとしているのが伝わる。

 戦時下にも確かにあった何気ない日常とその裏で戦争を通して感じられる両者の不協和音。状況が悪化するにつれてその不協和音はより大きく彼らを悩ませることになるだろう。その不協和音がなくなり、調和(一致団結)してしまうとそこにはもう後戻りできない戦争一色の世界が広がってしまう。確かにその瞬間が近づいてきていることを感じさせられる。

■岡田拓朗
関西大学卒。大手・ベンチャーの人材系企業を経てフリーランスとして独立。SNSを中心に映画・ドラマのレビューを執筆。エンタメ系ライターとしても活動中。TwitterInstagram

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、中村蒼、山崎育三郎、森七菜、岡部大、薬師丸ひろ子ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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