『親バカ青春白書』は意外とリアルな“日常系”ドラマ? “父と娘”ドラマの変遷から考察

 「娘が大好きすぎて、娘と同じ大学の同級生になっちゃった」父をムロツヨシ、娘を永野芽郁が演じる福田雄一脚本統括・演出のドラマ『親バカ青春白書』(日本テレビ系)。近年は『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)や『凪のお暇』、『トクサツガガガ』(NHK総合)、『過保護のカホコ』(日本テレビ系)など、母と娘の関係性を描く作品は多数見られるが、「父と娘」の物語は少ない気がする。そこで、「父と娘」のドラマの変遷をまとめて振り返ってみたいと思う。

 直近で思い出されるのは、『パパがも一度恋をした』(東海テレビ、フジテレビ系)。同作では、妻を亡くして失意のまま3年間引きこもっていた主人公(小澤征悦)を心配するあまり、妻がおっさん(塚地武雅)の姿になって現れる。基本的にはパパを心配する娘視点で描かれているが、父×娘の間には「おっさん多恵子」である母が介在し、夫婦愛、家族愛が再確認されていく。つまり、家族再生のど真ん中に「母」が存在していた。

『監察医 朝顔』(c)フジテレビ

 また、震災で妻・母を亡くした父娘を時任三郎と上野樹里が演じた『監察医 朝顔』。これは、10名の脚本家が一話完結のオムニバスで「親子」を描いた『おやじの背中』(TBS系、2014年)の岡田惠和脚本による第1話、妻・母を亡くして以降、共依存関係にある父と娘を田村正和と松たか子が演じた「圭さんと瞳子さん」にも通じるものがある。関係性が良好じゃなかった父と娘が、事故をきっかけに入れ替かわる舘ひろしと新垣結衣の『パパとムスメの7日間』が放送されたのは2007年。もう10年以上前の作品だ。

 このように、近年は数えるばかりになっている「父と娘」の物語だが、古くは一つの定番だった。有名どころでは、石立鉄男が亡くなった姉の子・「チー坊」杉田かおるを引き取る『パパと呼ばないで』(日本テレビ系、1972年)や、西田敏行が子持ちの未亡人と結婚したことから3人の子(ここにも杉田かおるが)の父となる『池中玄太80キロ』(日本テレビ系、1980年~)。

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 特に『池中玄太80キロ』の場合は西田敏行が演じる玄太がとにかく優しく、涙もろく、愛情深く、魅力的なキャラクターで、西田は第2シリーズの挿入歌「もしもピアノが弾けたなら」で紅白歌合戦にも初出場している。

 しかし、石立、西田と続く情熱的でハートフルな父から、スタイリッシュな父へと大きく様変わりしたのが、80年代~90年初頭の田村正和だろう。彼の場合は「パパ」という言葉が実によく似合う。『パパはニュースキャスター』(TBS系、1987年)で田村正和が演じたのは、女たらしで悠々自適に暮らす独身貴族のニュースキャスターだ。ある日突然、酒の席で口説いた3人の女性との間にできた3人の娘がやってくる。そのドタバタ展開もさることながら、おかしかったのは、3人の娘の名はそれぞれ「愛」と書いて「めぐみ」だったこと。

 これは、酒に酔って女性を口説くときのお約束フレーズ「そろそろ身を固めようと思っている。娘がデキたら名前は決めてある。『愛』と書いて、『めぐみ』。愛に恵まれるように」からで、いまだにこの口説き文句を忘れられないという人も多いのではないだろうか。

 さらに離婚した妻が蒸発したことで、4人の子供を引き取ることになる『パパは年中苦労する』(TBS系、1988年)を経て、『パパとなっちゃん』(TBS系、1991年)において、溺愛する娘(小泉今日子)が嫁ぐまでの日々の葛藤や苦悩、親バカぶりを魅力的に見せてくれた。幼い子の育児ではなく、大人の娘と父親を描いたことも、大きな変化である。

 そんな「娘を溺愛する親バカのパパ」を描くドラマといえば、忘れてはいけないのが、大地康雄と持田真樹の『お父さんは心配症』(テレビ朝日系、1994年)だ。同作が放送されたのは『パパとなっちゃん』より後になるが、原作は1983年より『りぼん』(集英社)で連載されていた岡田あーみんの人気漫画。

 妻に先立たれた父(パピィ)は、娘が不良に走らないかと心配するあまり、変態的にも見える暴走を繰り返す。娘のデートの邪魔や、彼氏への嫌がらせも忙しく、その心配症ぶりについて娘は困っているものの、父を嫌うどころか、心から慕い、大切に思っている。

 また、仕事人間で、家庭を顧みなかった銀行員が、妻が家を出てしまったことにより、娘と向き合うことになる草なぎ剛主演の『僕と彼女と彼女の生きる道』(関西テレビ・フジテレビ系、2004年)では、娘への愛情と父親の自覚が芽生えていく様が、繊細な演技で優しく丁寧に描かれていた。

 中山美穂主演の『ママはアイドル!』を原案とし、性別を入れ替えてリメイクされた錦戸亮主演の『パパドル!』(TBS系、2012年)のようなケースもあった。

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