『MIU404』でのさらなるサプライズにも期待 不条理に立ち向かう『アンナチュラル』を振り返る

 『MIU404』(TBS系)第8話では、第4機捜の志摩一未(星野源)と伊吹藍(綾野剛)がUDIラボを訪れる。UDIラボは、ドラマ『アンナチュラル』(TBS系)の舞台となった半官半民の法医学センターだ。

 2018年1月期に放送された同作は、石原さとみ演じる法医解剖医の三澄ミコトが、不自然死(アンナチュラル・デス)と呼ばれる原因不明の遺体を解剖し、死の真相を明らかにしていくストーリー。後半では法医解剖医・中堂系(井浦新)の死んだ恋人をめぐるエピソードも明かされ、回を追うごとに話題が沸騰。2010年代を代表するドラマ作品となった。

 志摩と伊吹を迎えるUDIラボの所長・神倉保夫(松重豊)は厚労省の元官僚で、不自然死の究明に特化した施設として、UDIラボを立ち上げた。法医解剖医のミコトと中堂のほかに、臨床検査技師として東海林夕子(市川実日子)と坂本誠(飯尾和樹)が所属。また、医大生の久部六郎(窪田正孝)がアルバイトの記録員を務める。

 中堂班の坂本は、おなじみのムーミンのハンドパペットを手に、志摩と伊吹が乗る機捜404号車「まるごとメロンパン号」に接近。坂本は中堂の暴言(「クソ」)と傍若無人な振舞いに耐えかねてUDIラボを辞めたが、『アンナチュラル』最終話で復帰。「クソ」を口にしないと念書を書かせた中堂と、なんとか上手くやっているようだ。

 もの言わぬ遺体から過去の出来事を解き明かす『アンナチュラル』において、敵は「不条理な死」だ。法医学の知見を生かして、それぞれの死に至る経過に切り込む、その手並みの鮮やかさが印象に残る。

 たとえば、第1話で突然死した高野島渡(野村修一)は、出張先のサウジアラビアからMERSコロナウイルスを持ち込んだとして名指しで非難される。同僚との三角関係も疑われる中で、婚約者の馬場路子(山口紗弥加)からの聞き取りによって、帰国後に健康診断を受けた大学病院での院内感染が判明する。国外からのウイルス持ち込みというもっともらしい推論の裏には、研究室からのウイルス漏洩という「不都合な真実」が潜んでおり、生者が押し付けた不条理な死はミコトたちの手で暴かれる。

 一方で、生き残った者にも死という現実は重くのしかかる。ミコトも中堂も、近しい人を不慮の死で失ったことが法医学者としての原動力になっているのだが、そのありようは異なる。「不条理な死に負けるってことは、私を道づれにした母に負けることだから」と語るミコトにとって、生きることは不条理な死に抗うこととイコールだ。

 中堂については、殺された恋人の遺体を解剖したことが大きな傷になっている。もし仮に真実を知り、犯人の正体がわかったとして、恋人を亡くした中堂の傷が癒えるかと問われれば、答えはノーだ。そのことを本人もわかっていて、それでもどうしようもなく復讐に向かってしまう中堂の哀しみの深さが、作品全体のトーンを決定づけている。

 『MIU404』第8話で、中堂は遺体の指に注目。新たに発見された遺体と過去の連続殺人との関連性に違和感を抱く。真相は愛する人を失ったがゆえの単独犯だったのだが、もし復讐心に駆り立てられた中堂が、最後の一線を超えていたらと想像しないわけにいかなかった。

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