矢田亜希子、健在! 『愛くれ』『やまとなでしこ』から『ギルティ』魔性の母親役への変遷
一方で、『やまとなでしこ』で演じた、松嶋菜々子演じるヒロイン桜子の後輩・若葉は、こんな子、なかなかいないと思わせるお嫁さんにしたい役柄である。若葉は『愛していると言ってくれ』に続くヒロインの恋のライバル役。ヒロイン桜子がかなり奔放で、相手役・欧介(堤真一)を振り回していくのに対して、若葉は欧介の店の手伝いなどもして、どう考えても若葉を選んだほうが幸せになれるだろうと視聴者に思わせた。
一見、楚々とした、それこそ大和撫子ふうな桜子が実はやんちゃで、明るめな茶髪で一見キツそうに見える若葉が尽くし型という意外性を、松嶋菜々子と矢田亜希子がじつに的確に演じていた。
デビュー時の負けん気の強さからホラー時代のミステリアスさ、矢田の瞳から放たれる力は、やがて、思慮深さへと色を変えていく。草なぎ剛の代表作のひとつ『僕の生きる道』(2003年/関西テレビ・フジテレビ系)では余命わずかながら誠実に生きていく主人公を見つめ、支えるヒロインを抑制した演技でやり切った。
凛として、媚ることなく、いつも冷静な瞳で世界の果てまで見通すような矢田亜希子。だがその稀有なパワーは、結婚後、長らくなりを潜めていた。そんな矢田亜希子が再び復活してきたのが最近。このごろは母親役を演じるように。それも単なる母親ではなく、何かを抱えたような役である。
『ギルティ~この恋は罪ですか?~』の毒母は、昔とった杵柄ではないが、過去、ホラー映画や超能力ものをやっていたときのあやしいパワーを感じさせた。矢田亜希子、健在なり。さらにそこに年齢相応の深みが加わって、ますます頼もしい。
■木俣冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメ系ライター。単著に『みんなの朝ドラ』(講談社新書)、『ケイゾク、SPEC、カイドク』(ヴィレッジブックス)、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』(キネマ旬報社)、ノベライズ「連続テレビ小説なつぞら 上」(脚本:大森寿美男 NHK出版)、「小説嵐電」(脚本:鈴木卓爾、浅利宏 宮帯出版社)、「コンフィデンスマンJP」(脚本:古沢良太 扶桑社文庫)など、構成した本に「蜷川幸雄 身体的物語論』(徳間書店)などがある。
■放送情報
プラチナイト 木曜ドラマF『ギルティ~この恋は罪ですか?~』
読売テレビ・日本テレビ系にて、毎週木曜23:59〜放送
出演:新川優愛、町田啓太、中村ゆりか、神尾楓珠、阿部亮平、長井短、結城モエ、筧美和子、大西礼芳、徳永えり、戸田菜穂、小池徹平
原作:丘上あい『ギルティ~鳴かぬ蛍が身を焦がす~』(講談社 ビーラブKC)
脚本:泉澤陽子、大林利江子ほか
演出:河原瑶、林雅貴ほか
主題歌:Toshl「BE ALL RIGHT」(ユニバーサル ミュージック)
スタッフ:チーフプロデューサー:岡本浩一(読売テレビ)
プロデューサー:中間利彦(読売テレビ)、黒沢淳(テレパック)、水野督世(テレパック)
制作協力:株式会社テレパック
制作著作:讀賣テレビ放送株式会社
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