『スイッチ』は“坂元裕二オールタイムベスト”? コロナ禍の現実では『Living』と真逆の印象に

 6月21日21時から、テレビ朝日系で坂元裕二脚本のスペシャルドラマ『スイッチ』が放送された。

 監督は映画『君の膵臓をたべたい』や岡田惠和脚本の『連続ドラマW そして、生きる』(WOWOW)などで知られる月川翔。主人公は検察官の駒月直(阿部サダヲ)と弁護士の蔦谷円(松たか子)。

 二人は元恋人で、今でもお互いの恋人を紹介し合う仲の良い関係だ。ある日、駒月が担当していた「連続突き飛ばし事件」の被疑者を蔦谷が弁護することになる。この事件をきっかけに、二人の意外な過去が明らかになっていく。

 2018年の『anone』(日本テレビ系)以降、ドラマ脚本の執筆を休んでいた坂元だったが、先日はNHKの『リモートドラマ Living』の脚本を執筆し、続けざまに本作『スイッチ』の発表となった。

 『リモートドラマ Living』が今までにない特殊な作品だったのに対し、今回の『スイッチ』は『カルテット』(TBS系)の軽妙な会話を基調に、『最高の離婚』(フジテレビ系)、『わたしたちの教科書』(フジテレビ系)、そして『東京ラブストーリー』(フジテレビ系)といった過去の坂元裕二作品の美味しいところをひとまとめにしたような盛りだくさんの作品だった。

 本作を観ていて感心したポイントが二点ある。

 一点は、駒月と蔦谷が付き合っているお互いの恋人の描写。二人はうんざりするぐらい健全で、インスタ映えする日常を送っており、夜の観覧車に乗りたいと、てらいなく言える人種だ。

 坂元裕二は人生が楽しくなくて卑屈なくせに上から目線で他人を冷笑している人たちの話を繰り返し書いている。そういう観点から見ると彼らは“敵”とでも言うような存在で、冷笑的に描かれているのだが、そんな二人の印象が途中でガラリと変わるのだ。

 その瞬間、「あなた、私たちのことつまらない人間だと思ってたでしょ?」と問い詰められたような、なんとも気まずい気持ちになるのだが、ここでちゃんと「気まずく」させてくれた点において、とても誠実な作品だと感じた。

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