朝ドラ『エール』窪田正孝×佐久本宝が表現した兄弟の愛憎 裕一と浩二が笑顔で再会する日を願って
しかし、忘れてはならないのは、裕一がこれまで許されてきた数々の“自由すぎる”行動がすべて清算されたわけではないこと。久しぶりに福島に帰ると、喜多一は店をたたみ従業員たちも散り散りに、後継のいなくなった権藤家は川俣銀行を手放し、かつての同僚は別の仕事に転職していた。茂兵衛(風間杜夫)はというと、趣味の陶芸に没頭していた。それぞれが新たな人生に不満を見せず裕一のことも温かく迎え入れたが、裕一の勝手が多くの人の人生を変えるきっかけになったことは言うまでもない。
そんな裕一に反し、浩二がその尻拭いをするように喜多一を継ぎ、福島に残って黙々と働いている様子をみると、ここでも2人の間には、考え方や振る舞いに対して決定的な違いがあることがわかるだろう。浩二の中には、嫉妬心だけではなくそんな価値観の相違からくるすれ違いで裕一を疎んじていた部分もあったのだと感じさせられる。
似ていない部分ばかりが描かれてきた古山兄弟だが、血の繋がった只一人の兄弟であることもまた確か。裕一が東京に帰る際には、今まできつい態度ばかりとってきた浩二が笑顔で裕一を送り出す様子も描かれた。これからの2人が、徐々に分かり合える日が来ることを予感させるシーンとなった。
■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter
■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、唐沢寿明、風間杜夫、菊池桃子、佐久本宝、マキタスポーツ、柿丸美智恵 ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/