柄本時生×岡田将生×落合モトキ×賀来賢人がリモート作品『肌の記録』で示した、“新しい演劇のかたち”

 本作で面白く感じるのが、やはり先に述べた、人形を用いた手法である。小さな人形を手に声色を変え、各人が自身の幼少期を演じるーー。「なんとチープな……」と言ってしまえばそれまでだが、現実を切り取ろうとする映画とは異なり、演劇は劇場という“場”に、ある一つの現実を構築する。そこで試されているのは、当然ながら観客の想像力だ。ある種の嘘を信じさせる演者の説得力、そして、観客(視聴者)の想像力に多くが委ねられるのが演劇の醍醐味なのである。本作の場合はあからさまではあるが、演劇の原始的なかたちが見られるのだ。

 さて、彼ら4人の姿とやり取りから見て取れるのは、“明るいディストピア”だ。しかし、これだとまるで語義矛盾。本作で描かれる“未来”は、私たちのいまの生活からすると絶望的だ。だが決して、彼らは不幸そうには見えない。リモートであることを逆手に取って、現状を謳歌しようとしているように思える。ここから、“自粛”や“おうち時間”というものを楽しもうとする姿勢とメッセージを受け取ることができるだろう。

 ラストにはビックリな仕掛けがあるが、これから観劇(視聴)する方もいるのだろうから、それに触れることは控えたい。述べておきたいのは、映し出される彼らの存在と私たち自身が、まったく地続きの生活上にあることだ。タイトルには「肌」という言葉が冠されている。彼らは一度たりともその肌を触れ合わすことがないにも関わらずだ。他者の肌には触れられないし、画面越しだとその肌の質感というものまでは伝わらない。これをネガティブなものとは捉えず、やがて訪れるであろう触れ合いのときを夢見て、いま残しておくべき「記録」が本作なのではないのだろうか。

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

■配信情報
劇団年一『肌の記録』
5月7日(木)19:00~5月21日(木)23:59まで上演
脚本・演出:加藤拓也
出演:柄本時生、岡田将生、落合モトキ、賀来賢人(以上50音順)
技術協力:中島唱太
撮影協力:柄本(嫁)
公式YouTube:https://youtu.be/cosy5UZML7g

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