『素敵な選TAXI』再放送で楽しむ“シニカルな笑い” 『スカーレット』八郎役・松下洸平も登場!

 新型コロナウイルスの影響で放送が延期になったカンテレ・フジテレビ系火9ドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』の代わりに、2014年に放送された連続ドラマ『素敵な選TAXI』が現在、再放送中だ。

 4月14日に第1話が再放送された本作は、乗客が望む過去まで連れていくことができる「選TAXI」というタクシーの運転手と、様々な人生の“選択”を誤り困っている乗客が、やり直したい過去までタイムスリップし、様々な結果を体験するタイムリープものの作品だ。「選TAXI」の運転手である枝分を竹野内豊が、乗客をゲスト俳優が演じ、第1話では安田顕が登場した。枝分の行きつけのカフェの店主・迫田宏役を務めるバカリズムは、本作で脚本も担当し、第3回「市川森一脚本賞」奨励賞を受賞。その後も精力的に脚本家としての活動を続けている。

 第1話では売れない役者の秀樹(安田顕)が恋人の香(小西真奈美)に無事プロポーズし、受け入れてもらうための“選択”を見つけるまでを描く。タイムリープもののドラマと言えば、前クールの『テセウスの船』(TBS系)が記憶に新しい。さらに4月期では『いいね!光源氏くん』(NHK総合)も放送中。そんな中、本作は一つの話の中で何度でもタイムリープでき、かつ過去に遡る時間は30分〜数時間程度と短いのが特徴である。さらに、タイムリープに演出はなく、タクシーに乗って目的地に行くまでに自然と時空が変わっているという設定だ。

 本作の魅力は、バカリズムの筆致が光る独特の脚本だろう。そこにはシニカルな笑いが込められており、「ぼやき」のようなセリフや被せるセリフの多さは、「間」や「テンポ」を重んじる芸人の作法がふんだんに現れていた。つまりは、役者にとって“セリフをキメる”ために喋らせるのではなく、ただ淡々と日常が流れていくような自然な流れの中に溶け込んだセリフでクスリと笑ってしまう要素が込められている。第1話では、そんな自然な会話を重んじるが故に「今カッコつけました?」などとセリフらしいセリフを揶揄するシーンや、秀樹がセリフの内容に迷って「前のタ…車追ってください」と噛んだことを、枝分が「(噛んでしまって)もったいない」と嘆くようなシーンもある。これらは、バカリズム脚本の面白さに加えて、第1話が「役者」の話であることや、本作のテーマが「選択」にあることにもかかっている。こうした何重にも仕掛けられた伏線が、物語をさらに味わい深くしているのだ。

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