『名探偵コナン 紺青の拳』はキャラクターの関係性が焦点に シリーズ初の女性監督がもたらした偉業

 また、今作はシンガポールが事件の舞台となるが、『コナン』の劇場版作品としては初の海外を舞台にした作品だ。時には幻想的な雰囲気も漂い非日常感も伝わり、1年に1度のお祭りである劇場版作品にふさわしい体験を観客を提供する。そして、シンガポールの映像の美しさもさることながら、驚いたのは英語のセリフの多さだ。多くのファミリー層に向けたアニメ作品では、海外や異世界を舞台としても、セリフは日本語のままの作品も多い。国が変わってもなぜ日本語が通じているのか? という疑問が発生しても、アニメだから、という理由でそのまま流してしまいがちではあるが、今作は英語は英語、日本語は日本語と分けられている。この試みによって、非日常的な雰囲気が増しているように感じられた。

 その結果もあるのか、本作の海外での高い人気も注目したい。特に中国では30億円以上の興行収入を記録するなど、世界でも高い人気を発揮している。『映画ドラえもん』シリーズなどの、毎年公開されるおなじみのキャラクターの映画作品は中国などの世界でも高い人気をほこり、安定した興行収入を記録している。『コナン』も同じようにキャラクターとしての知名度だけでなく、作品のブランド力も確立され、多くのファミリー層を中心としたファンを魅了しているのだろう。

 今年こそは日本興行収入100億円突破を! と高い期待が集まっていた『名探偵コナン 緋色の弾丸』は、新型コロナウイルスの感染拡大により公開が延期された。こちらも永岡監督作品であるだけに、キャラクターの魅力を最大限に引き出した作品になっているのではないだろうか。この騒ぎが収束し、劇場が再開された時、コナンシリーズは1年に1度のお祭りを改めて観客に提示し、平穏な日々の象徴として、多くの人に愛され続けるだろう。

■井中カエル
ブロガー・ライター。映画・アニメを中心に論じるブログ「物語る亀」を運営中。
@monogatarukame

■放送情報
『名探偵コナン 紺青の拳』
日本テレビ系にて、4月17日(金)21:00〜23:09放送 ※放送枠15分拡大
原作:青山剛昌
監督:永岡智佳
脚本:大倉崇裕
音楽:大野克夫
声の出演:高山みなみ、山崎和佳奈、小山力也、山口勝平、林原めぐみ、山崎育三郎、河北麻友子
(c)2019 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

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