売れっ子クリエーターの原点! 舞台版『フリーバッグ』はテレビ版を観た人も観ていない人も必見

#MeToo時代の今だからこそ舞台化した想い

 2013年の初演も今回上映される2019年の舞台版も、演出(監督)は、フィービーと一緒に劇団DryWhiteを立ち上げたヴィッキー・ジョーンズである。フィービーはBBC Radio 4のインタビューの中で、彼女がいなければ何もできなかったと語ったほど、親友として、そして良き創作のパートナーとしてヴィッキー・ジョーンズに信頼を置いている。ヴィッキーは今回のタイミングであえて舞台版に再度取り組んだ背景として、「舞台版はテレビ版と異なる。舞台版は、自分自身を性的な商品(コモディティ)として捉え過大評価する女性や、自己や他人を客観視し、ポルノにはまってしまってこじらせている女性に、より焦点を当てている。彼女は自分自身のことをフェミニストと呼びたいけどできない。私たちはそういったことを再度語りたかった」とインタビューで語っている。

(c)2019 Fleabag photo by Matt Humphrey

 年々フェミニズムについて語られる場が増えていたが、#MeToo運動が起き、世界中の女性がフェミニズムについてより多くを語れるようになった。だが、フェミニズムを語る女性としても複雑で、自分自身で言語化することすら難しくもどかしい日々が、切実な現実としてある。そんな今だからこそ、あえてオリジナルキャストと製作者で作れるタイミングで舞台版『フリーバッグ』の上演に至ったようだ。

 フィービーはGQのインタビューでこう話している。「私にとって自分への挑戦とは、細部に至るまで自分が楽しもうとすることである」と。様々なインタビューで脚本を書くプロセスは混乱に満ちていて辛いが、希望もあると語るフィービー。彼女が人生を注いで取り組んだ『フリーバッグ』は、作風として下衆、毒舌、過激と表現されがちだが、その表現を巧みに「壊れた人間の人生と希望」へ結びつけ、結果的にそれぞれの人生を生きる観客の心をグッと掴んで離さない。他人事として観ていた主人公・フリーバッグの話にケラケラ笑っていたら、突然「あなたの人生はどう?」と胸を抉られる。テレビ版を観た人も観ていない人も、ぜひ映画館へ足を運び、世界トップクリエーターの珠玉の脚本によるストーリーを堪能してほしい。

ナショナル・シアター・ライブ『フリーバッグ』予告編

参照

https://youtu.be/D3mmqLVi_QQ
https://sohotheatre.com/people/drywrite/
https://www.gq-magazine.co.uk/article/phoebe-waller-bridge-tina-fey-interview
https://womenandhollywood.com/fleabag-director-vicky-jones-talks-bringing-phoebe-waller-bridges-play-back-to-the-stage/

■キャサリン
Netflix、Amazonプライムビデオ等のストリーミングサービスで最新作を追いかける海外テレビシリーズウォッチャー。webメディアなどで執筆。
note:https://note.mu/hitoto04
Twitter:https://twitter.com/Hitomi_forward

■公開情報
ナショナル・シアター・ライブ『フリーバッグ』
上映期間:3月13日(金)〜3月19日(木)※1週間限定
公開劇場:TOHOシネマズ 日本橋、シネ・リーブル池袋、TOHOシネマズ 川崎、TOHOシネマズ 赤池、大阪ステーションシティシネマ、福岡・中洲大洋映画劇場
料金:一般3000円、学生2500円(学生証の提示が必要)
※上映劇場によって追加料金がかかる特別な席がある場合がございます。

作:フィービー・ウォーラー=ブリッジ
演出:ヴィッキー・ジョーンズ
主演:フィービー・ウォーラー=ブリッジ
上演劇場:ウィンダムズ劇場(ロンドン)
原題:Fleabag
上映時間:88分(休憩なし)
公式サイト:http://www.ntlive.jp

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