伊藤英明は作品に説得力を持たせる 『病室で念仏を唱えないでください』で見せる“厚み”
厚みのある人間力で患者を救済
『病室で念仏を唱えないでください』の松本は救命救急医で僧侶という異色のキャラクターだ。正確には医療機関で心のケアをするチャプレン(臨床宗教師)だが、心身両面から患者を相手にするタフな役どころである。医師であれば一人でも多くの命を救おうとするものだが、そこには救いきれない命があるという暗黙の前提が隠れている。
医療の現場は全力で立ち向かうべき場所だが、同時に自らの無力さとも向き合うことになる。最期を迎えた患者や遺族に何ができるかという重いテーマを扱った本作では、個性的な救急救命センターの面々に加えて、唯一無二と言える松本のキャラクターがドラマのトーンを決定づけている。
血の気が多く、言葉よりも先に手が出てしまう松本は、虐待をした患者の家族を殴ってしまうなど、医師としての自制心よりも人間としての正義感が上回る場面もしばしば。僧侶であるにもかかわらず煩悩を隠さない姿には矛盾を抱えた人間臭さがあふれており、患者との触発がドラマを生み出す。多くの命と向き合ってきた伊藤の人間力とも言える厚みが、作品に一過性のものではない説得力を持たせている。
デビュー前に肉体労働をし、家族と過ごす時間をつくるためにアメリカに移住するなど、飾らない素顔が親近感を抱かせる伊藤英明。年齢を重ねても若々しさを保っているのは、等身大で役と向き合っているからだろうか。現在放送中の大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK総合)をはじめ、映画『燃えよ剣』も公開を控えている。40代俳優の真打として、スケールの大きな演技を見せてくれることを期待したい。
■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログ/twitter
■放送情報
金曜ドラマ『病室で念仏を唱えないでください』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:伊藤英明、ムロツヨシ、松本穂香、片寄涼太(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、唐田えりか、谷恭輔、うらじぬの、土路生優里、吉田日向、土村芳、安井順平、時朗、横田真悠、堀内健、宮崎美子、余貴美子、泉谷しげる、萩原聖人、中谷美紀
第1話ゲスト:hitomi、永山竜弥、丸山ゴンザレス、飯窪春菜
原作:こやす珠世『病室で念仏を唱えないでください』(小学館『ビッグコミック』連載中)
脚本:吉澤智子
演出:平野俊一、岡本伸吾、泉正英、
プロデューサー:峠田浩
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/nembutsu_tbs/