『麒麟がくる』大暴れする長谷川博己は必見! 若きヒーローはいかにして“明智光秀”になるのか

 戦災孤児・駒の口から語られる「麒麟」の伝説。麒麟とは、王が仁のある政治を行う時に必ず現れると言われる聖なる獣。その伝説を信じる駒の純粋な瞳。長谷川博己と門脇麦は共演経験もあり安定感のある芝居を見せてくれる。ほかに芝居のやりとりで面白かったのは、吉田鋼太郎演じる松永と光秀の場面。詳しくは書かないのでオンエアを楽しみに見てほしい。

 長谷川は「主演は受けだから、最初は、キャラの強い人から受けたものを循環させていくものと思っていたが、このままでは、光秀としても俳優としてもいけない気がして、あえて自分から仕掛けてもみた。そのうち、光秀はこういう得体のしれないものを持ち続けていく人間なんじゃないか。『自分が何者かわからない』というようなセリフにも通じるんじゃないかと思う」と言い、一般的に知られた明智光秀になる前の姿を演じることに試行錯誤をしているようだ。

 物語はこれからなのでここではまだ考察しないが、ロケの風景がきれいなのと(ドローンを多用した広い画が気持ちいい)、黒澤和子が手掛ける衣裳が鮮やかで眼福。たいてい女性の着物に目がいくのだが、光秀の着物の色も柄も美しく、毎回の楽しみになりそうだ。試写は4Kだったので画面の美麗さが一層際立っていた。

 さて、一話でやっぱり気になるのはアクシデントによって急遽、川口春奈が帰蝶の代役で登板したことだ。帰蝶は、道三の娘でのちに信長の妻となる重要な役で、光秀とは姻戚関係。第一話から帰蝶は登場するが、川口春奈の凛として華やかな存在感は堂々たるもの。活発そうな感じで、これからの活躍を応援したくなる魅力に溢れていた。

 岡村隆史演じる謎の農民・菊丸も登場。物語の前半を彩っていく人々が続々出て来てわくわくする。本木演じる斎藤道三の貫禄はザッツ大河!という感じ。画面を引き締めまくる。ほかに声優の大塚明夫も出演。人気声優が出演して話題になった大河として『真田丸』の高木渉が記憶に残っているが、今回の大塚も話題になりそう(ちなみに大塚は吉田鋼太郎と同じ劇団で舞台活動もやっているのだ)。

 夏のオリンピック期間中の三週間はお休みの全44話。「本能寺の変」まで明智光秀がどう駆け抜けていくか一年間、楽しみだ。

■木俣冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメ系ライター。単著に『みんなの朝ドラ』(講談社新書)、『ケイゾク、SPEC、カイドク』(ヴィレッジブックス)、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』(キネマ旬報社)、ノベライズ「連続テレビ小説なつぞら 上」(脚本:大森寿美男 NHK出版)、「小説嵐電」(脚本:鈴木卓爾、浅利宏 宮帯出版社)、「コンフィデンスマンJP」(脚本:古沢良太 扶桑社文庫)など、構成した本に「蜷川幸雄 身体的物語論』(徳間書店)などがある。

■放送情報
大河ドラマ『麒麟がくる』
NHK総合にて、2020年1月19日(日)より放送
※初回75分放送
主演:長谷川博己
作:池端俊策
語り:市川海老蔵
音楽:ジョン・グラム
制作統括:落合将、藤並英樹
プロデューサー:中野亮平
演出:大原拓、一色隆司、佐々木善春、深川貴志
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/kirin/
公式Twitter:@nhk_kirin

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