安達奈緒子の3作品が高評価! “日常系”が増え始めた2019年を振り返るドラマ評論家座談会【前編】

民放ドラマ、恋愛要素の塩梅がポイントに

ーー民放のゴールデンタイム帯のドラマはどうでしたか?

成馬:そこが一番、壁にぶつかっているという印象でした。今は『いだてん』のように大規模でじっくりと作られたドラマか、『ひとりキャンプ〜』みたいな、YouTubeとかTikTokのプライベート動画に近いようなものに二極化していて。これまで主流だったトレンディドラマの流れを汲んだ、仕事と恋愛を描くタイプのドラマが今は一番迷っているようにみえる。もしかしたら、あと何年かしたら成立しなくなるのかもしれない。

西森:民放のドラマは、要素が複雑になっていますよね。恋愛だけでも仕事だけでもなくて、『G線上のあなたと私』もOL、主婦、男子大学生という不思議な3人の関係性が進んでいきます。

成馬:エンドロールで必ず、也映子と理人(中川大志)がくっつくかどうかという恋愛要素を入れてきますよね。あそこだけは昔のドラマを引きずっている感じがある。

田幸:『G線上』は松下由樹さんがすごく重要なので、二人の恋話に舵を切らないでほしいと思ってるドラマファンは多かったと思うんですけど。

成馬:『G線上』の面白さってそこじゃないですよね。でも、宣伝の仕方を見ると、そこを押し出す形になっている。『凪のお暇』にしても、黒木華が高橋一生と中村倫也どっちとくっつくかは見どころではなかった。三角関係のドラマのようにみえるけど、見てる人はそれを求めていなくて。宣伝だけみると、よくあるラブコメに見えてしまったのがもったいないなと思います。

西森:TBSの恋愛モノは社会問題もいれながら恋愛も描いていて、決して恋愛だけでやろうとしていないんだなということを感じます。例えば『わたし、定時で帰ります。』もそうだし、『グッドワイフ』もそう。恋愛だけではないもので、ちょっと恋愛が出てくると、けっこうぐっとくる。『わたてい』の向井理も、『グッドワイフ』の小泉孝太郎も、その恋愛要素が少ない中での恋愛要素の塩梅がよくて、信頼のできる役柄になったことで、前よりちょっと好きになっている感じがありました。『G線上』も、恋愛要素を少ないと見るか、多いと見るかで、そこが変わってきそうですね。私は恋愛要素が少なくて、三人の友情が感じられる時にこそ、中川大志さんの良さが出ていた気がしましたね。

成馬:以前、TBSの磯山晶プロデューサーにインタビューしたのですが、火曜10時枠は、『ダメな私に恋してください』が当たった時に手応えを感じたらしくて、「もっとキュンキュンするドラマをOLさん早く帰っての体力を温存できる火曜日にやるべきだと決めた」と話していたのを覚えてます。ただ昔の月9にくらべるとTBSの火曜ドラマで放送されている作品は、もっと日常に根ざしたものになっているように見えますね。仕事も恋愛も趣味も生活の一部で一緒に楽しんでいる、みたいな感じで。

田幸:一定の層に向けてというよりは、スタンプラリー的にこっちの層もあっちの層もと、取りこぼしないように作っているのかもしれません。

(取材・文=若田悠希)

■放送情報
『きのう何食べた?お正月スペシャル』
テレビ東京にて、2020年1月1日(水・祝)22:00〜23:30放送
原作:よしながふみ『きのう何食べた?』(講談社『モーニング』連載中)
出演:西島秀俊、内野聖陽、田中美佐子、マキタスポーツ、山本耕史、磯村勇斗、高泉淳子、チャンカワイ、中村ゆりか、松山愛里、椿弓里奈、山本楽、唯野未歩子、奥貫薫、田山涼成、梶芽衣子
OPテーマ:「帰り道」OAU(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)<NOFRAMES/TOY’S FACTORY>
EDテーマ:「iをyou」フレンズ<ソニー・ミュージックレーベルズ>
脚本:安達奈緒子
監督:中江和仁、野尻克己、片桐健滋
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:佐藤敦、瀬戸麻理子
制作:テレビ東京/エイベックス・ピクチャーズ
製作著作:「きのう何食べた?正月スペシャル 2020」製作委員会
(c)「きのう何食べた?正月スペシャル 2020」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/kinounanitabeta/
公式Twitter:https://twitter.com/tx_nanitabe

『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』総集編
[NHK総合]
12月30日(月)
午後1:05~3:20 〈第1部〉前・後編
午後3:25~5:40 〈第2部〉前・後編
[NHK BSプレミアム]
1月2日(木)
午前8:00~10:15 〈第1部〉前・後編
1月3日(金)
午前8:00~10:15 〈第2部〉前・後編
作:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
出演:阿部サダヲ、中村勘九郎/綾瀬はるか、麻生久美子、桐谷健太、斎藤工、林遣都/森山未來、神木隆之介、夏帆/リリー・フランキー、薬師丸ひろ子、役所広司
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/idaten/r/

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