吉沢亮、吉岡里帆、東出昌大らが魅せる演技の妙味 “一人二役”は、役者に課された挑戦状?

 公開中の『空の青さを知る人よ』にて、声優初挑戦でありながら、同じキャラクターの18歳と31歳の姿を“一人二役”で好演している吉沢亮。思えば彼は、実写版『キングダム』でも一人二役で健闘していたのだが、これが意味するところは何なのかーー。やはりそこには、繊細かつ高い技術力が必要不可欠であることは想像に難くない。

 先に『キングダム』での吉沢から触れていきたい。彼が演じたのは、天下の大将軍を夢見る主人公・信(山崎賢人)の幼馴染み・漂。たくましく心優しい漂は、物語の冒頭で王の影武者として無念の死を遂げ、その後、信の前に現れた秦国王・エイ政の見た目が漂と瓜二つで、これも吉沢が演じているというわけだ。

『キングダム』(c)原泰久/集英社 (c)2019映画「キングダム」製作委員会

 本作で吉沢に課せられたハードルはかなり高い。単純に原作モノの実写化だということもあるが、戦乱の世を描いた作品とあって、高い身体能力も求められる。それに加え、一人二役なのだ。一方は戦災孤児の下僕で、他方は国王。その身のこなしや声の調子、細かな表情の動き一つとっても、大きな差異を出すことが必要なのである。しかし同時に“差異を出す”というのは、これまで多種多様なジャンルの作品、キャラクターに挑んできた吉沢ならば、これといった不安もなく観ていられる。だがこれが、アニメ作品となれば話はまた変わってくるのだ。

 『空の青さを知る人よ』で吉沢が演じているのは、プロギタリストを夢見る18歳の熱い高校生と、現実を知った31歳のギタリスト。とあることが原因となって、この二人は出会うことになる。プロのギタリストになりはしたものの、それは彼がかつて夢見ていた姿とはだいぶ違う。これを吉沢は、“声だけ”で表現しなければない。実写であればその全身をもってしてキャラクターを表現することが可能であるし、その人間性というものは、細部にこそ宿るものなのだろう。18歳と31歳といえば、たかだか13歳の年齢差しかない。声だけで表現するには、非常に細やかな違いを狙っていかなければならないのである。しかし確実に吉沢が提示した、前向きな少年の陽気さと、希望を失くした未練がましい青年の倦怠とに驚かされたのは、筆者だけではないはずである。

 “一人二役”を演じるということは、いち俳優にとって、その実力が試される機会となるのではないだろうか。そこでは彼ら個人の魅力や人間力だけでは太刀打ちできず、やはり演じ手としての技術力が必要となってくることは間違いない。

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