『なつぞら』が描き続けた“命を与える”営み 改めて胸に刻みたい、泰樹がなつへ授けた言葉
『なつぞら』(NHK総合)の放送が終了して、早くも2週間。朝ドラにはそれぞれの作品ごとに違った魅力が隠されており、第100作目にあたる本作もまた素敵なメッセージがたくさん散りばめられていた。
アニメーションとは、動かないものに“魂”を与えて動かす、“命を与える”ことを意味するのだと本作で知った。思うに、この「命を与える」という営みはアニメーションに限らず、なつ(広瀬すず)を含めたあらゆる登場人物が、本作中で行ってきたことに通ずるのではないか。
絵を描くことも、土地を耕すことも、舞台の上での演劇も、お菓子作りも、あるいは一杯の天丼を作ることだってそうだ。それぞれのやり方で、“命”が与えられる場面が丁寧に描かれてきた。アニメーション製作で言えば、登場人物の設定から物語の細部に至るまでとことん作り上げていく中で、なつや坂場(中川大志)たちはひたすら作品のリアリティを追求していった。子どもであろうと、大人であろうと、ワクワクさせることができて、観る者の感性や知性に訴えかける作品。そんな作品の製作の裏側には、彼らの葛藤と努力があったのだ。一時北海道に帰ってきて、なつと倉田先生(柄本佑)が再会した場面で、先生はなつが携わったアニメを観て「お前の魂を感じた!」と言うが、“魂”の存在、“命”の存在はときにこうしてしっかりと伝わるのである。
父の雪之助(安田顕)に認めてもらうべく、バタークリームのケーキを作ったときの雪次郎(山田裕貴)の姿にも、“魂”を込めようとする姿があった。あるいは、なつや咲太郎(岡田将生)が千遥(清原果耶)の天丼を食べたときに、深い感慨に包まれたのもまた、そこに家族の記憶というある種の“命”が宿っていたからかもしれない。
そして、『なつぞら』ではアニメーションの製作自体もそうであるが、結婚、妊娠・出産、そして育児という人生のステージの中で直面する壁も、作中の随所で描かれてきた。会社に直談判しなければならないときもあれば、保育園に落ちることだってあった。製作の現場だけではなく、仕事から帰ってきてからも、日々頭と体をフルに使うなつの姿がそこにはあったのだ。