ラグビーW杯にボールを繋いだ『ノーサイド・ゲーム』 廣瀬俊朗の選手時代を彷彿とさせた名演

 9月に幕を下ろした池井戸潤原作のTBS日曜劇場のドラマ『ノーサイド・ゲーム』。 演出は元ラガーマンの福澤克雄、劇中のラグビーチーム「アストロズ」のメンバーも全員が経験者であり、ラグビーの試合のリアリティを追求して作られた本作は感動を呼んだ。そしてドラマの放送と入れ替わるようにして、ラグビーワールドカップ2019日本大会の幕が上がり、本日、日本とサモア戦が待ち構えている。

 各試合の中継番組視聴率は好調で、日本開催という身近さはもちろんだが、ドラマ・原作の『ノーサイド・ゲーム』からの影響も大きいだろう。ドラマで印象を残した名俳優として浮かぶのは、「アストロズ」のリーダー浜畑譲役を演じた廣瀬俊朗だ。廣瀬は、現在は選手を引退し、コーチや大会のアンバサダーなどを通し、ラグビーを普及する活動を行っている。初回登場時から、演技経験がないながらも廣瀬の表情は印象的で、最終回でのキーマンとしての活躍を見た視聴者からは大興奮の声が届いていた。

 スポーツライターの向風見也氏に、ラグビー界隈では本作がどのような盛り上がりを見せていたのか、話を聞いた。

「もともとオーディションの段階で選手が出演するという噂はあったみたいですが、実際に演技をしている姿をテレビで見たら、ファンの方も驚いたと思います。関係者の方から、ラグビーを役者に教えるより、ラグビー経験者に芝居を付けた方が、作りたい画を撮るためへのゴールが早いと聞きました。僕は演技のことはそれほど詳しくないですが、廣瀬選手は確かに回を重ねるに連れて出番が増えていったので、現場でもかなりの存在感があったんだろうと思います」

 実際、浜畑のエピソードを廣瀬自身の選手時代と重ね合わせて見ている視聴者の声も多かった。向氏は廣瀬の日本代表時代をこう振り返る。

「ラグビーワールドカップ2015で、廣瀬選手も日本代表の31名の登録メンバーに入っていましたが、31人中2人は試合の出番がなく、廣瀬選手はその1人でした。しかし、南アフリカ代表との初戦に向けて、国内リーグの選手たちから応援メッセージを集めてみんなに見せるなど、グラウンド外でチームを一つにするような動きをされていた方です。大会期間中もロッカールームやグランド周りの掃除を率先してやったり、ゲームに出ない人の中で規範的な立場にいて、チームに不満因子が生まれにくい環境を作っていた。W杯で最高成績を残すことに貢献した重要な1人でした」

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