『IWGP』制作も手がける動画工房、地力の源泉は育成にあり? 幅広い活動とその歴史を振り返る

人材育成が動画工房の実力の源泉

 動画工房は今でこそ日常ものアニメのトップランナーというイメージが強いが、その長い会社の歴史の中で、制作協力という形で様々な作品を手がけている。前述したようにスタジオジブリの作品にも参加しているし、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』、子供向けアニメの『かいけつゾロリ』や『ポケットモンスター』に『ドラゴンボール』など多数の有名TVアニメを手掛けてきた実績がある。

 元請け作品としても日常もの以外に、オリジナルのロボットアニメ『銀河機攻隊 マジェスティックプリンス』や時代劇アクション『曇天に笑う』など幅広い作品を制作している。浮き沈みあるアニメ業界で長く会社を続けてきただけあって、地力のある制作会社なのだ。

 そうした地力の源泉は、やはり育成に力を入れてきたことにあるだろう。会社公式サイトでも一貫して人材育成に力を入れてきたと自負しているが(参考)、近年も、FUN’S PROJECTと共同で学生や若手アニメーター向けの動画学習教材「アニメータードリル」を開発したりと後進の育成に力を注いでいる(参照:新人アニメーター養成教材「アニメータードリル」の効果はいかに?「動画工房」の新人アニメーターが使った結果)。

 ちなみに、NHK朝の連続TV小説『なつぞら』の主人公のモデルになった奥山玲子氏が、かつて新人指導にあたっていた時期もあるそうだ(『日本のアニメーションを築いた人々』叶精二/若草書房、P.106)。また五味洋子氏も、初代社長の石黒育氏の丁寧な指導を日記で述懐しているなど(参照:アニメーション思い出がたり[五味洋子] その53 アド5の頃)、初期の頃から人材育成に力を注いできたことが伺える。

 20世紀に創業し、人材をコツコツと育て上げ、日常アニメで名を上げるなど、動画工房の沿革は京都アニメーションを彷彿とさせる。IWGPは、動画工房にとってこれまでのイメージを刷新するターニングポイントになるかもしれない。確かな実力を持った会社なので、どんな作品に仕上がるのか楽しみだ。

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■放送情報
TVアニメ『池袋ウエストゲートパーク』
2020年放送
石田衣良 IWGP/文藝春秋オフィシャルサイト:http://www.bunshun.co.jp/pick-up/iwgp/
公式Twitter:@iwgp_anime
(c)石田衣良/文藝春秋/IWGP製作委員会

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