重岡大毅「ゆっくりいこう」でハートを掴む “山田太陽スマイル”は視聴者の癒しに

 2人が両思いになると、ますます恋愛パートのおもしろさが加速する。第6話では「変わらなきゃ」と自分を鼓舞した森若が、自らキスをおねだり。だが山田はそれをスルーし、頭をポンポン。「ゆっくりいこう」とほほえむ様には、「なにその急な余裕感!」と、胸の高鳴りが止まらない。

 そこから“神回”と名高い第7話。森若が田倉の不倫現場を目撃したことを遠回しに相談すると、「尊敬してたってことは、その人に感動して幸せにしてもらったってこと。それは、ずっと残る。何があっても変わらない」と山田。いよいよ初キスという場面でリップを塗りたくる森若の姿に「かわいすぎる、殺す気か!」と悶えるのだが、多くの視聴者は「かわいすぎる、殺す気か!」と、そっくりそのまま太陽くんに伝えたいと思ったことだろう。

 「俺が食わせる」という昭和なプロポーズには驚いたが(いや正直「悪くない。かわいい」とさえ思ったが)、オロオロと森若の気持ちを詮索しようとする山田はいじらしく、愛らしい。最終回を迎える頃には、森若さんと太陽くんカップルの言動すべてが愛しく思えるようになっており、ラストに訪れた領収書のシーンなんて、にやつかずにはいられなかった。

 待ち合わせ場所に「沙名子さ~ん!」と走ってくる様は、アニメの世界から飛び出してきたかのようにファンタスティック。それなのに、山田の言葉は人間くさく、地に足が着いている。「言いたくなければ、言わなくていい」というスタンスながら、落ち込んでいるときには一番ほしかった答えをくれる。大正解の男だ。

 そして、山田を重岡が演じたことで、キャラクターの魅力は何倍にも増した。偽善者ではなく、心底“いいヤツ”と伝わるほほえみは、そうそう生み出せるものではない。“笑顔”がまぶしいアイドルの中でも、とりわけ“笑顔”が印象的な重岡。だが本作では、イメージを生かしながらも“アイドルスマイル”ではなく、あくまで“山田太陽のスマイル”で視聴者を癒し続けた。その手腕に、手のひらが痛痒くなるほどの拍手を送りたい。

 従来の胸キュンものとは異なる、かつて経験したことのないようなときめきをくれた『これは経費で落ちません!』。作品の素晴らしさは、続編を望む声の“数字”が証明済み。太陽くんの帰国を、森若さんと一緒に待っています。いや、待たせてください、心から。

■nakamura omame
ライター。制作会社、WEBサイト編集部、専業主婦を経てフリーライターに。小学生男児2人の母。ママ向け&エンタメサイトを中心に執筆中。Twitter

■放送情報
ドラマ10『これは経費で落ちません!』
出演:多部未華子、重岡大毅(ジャニーズWEST)、伊藤沙莉、桐山漣、松井愛莉、韓英恵
角田晃広、片瀬那奈、モロ師岡、平山浩行、吹越満ほか
原作:青木祐子
脚本:渡辺千穂、藤平久子、蛭田直美
音楽:安田寿之
主題歌:阿部真央
制作統括:管原浩(NHK)、坂下哲也(AX-ON)
演出:中島悟、松永洋一
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama/drama10/keihi/

関連記事