『なつぞら』がスター俳優揃いの朝ドラとなった理由 広瀬すずを中心としたキャスティングの裏側

「時間の経過を感じてもらえる」

ーー歴代朝ドラヒロインを総出演させるという仕掛けはどのように考えられたのでしょう?

磯:朝ドラヒロインの起用について言うと、最初に松嶋(菜々子)さんと小林(綾子)さんのお2人が決まったんです。その時点では、ヒロイン総出演が1つの売りになるとは考えていませんでした。『なつぞら』を作るにあたって、過去の色んな朝ドラを振り返ってみたのですが、ヒロインを終えた後、それぞれの女優さんが辿っていった道がとても興味深く、それが十人十色で、「この女優さんもかつては朝ドラのヒロインだったのか」と発見もあれば、「このヒロインは今こういう人生を送っているのか」という気づきもありました。だから『なつぞら』を作るにあたって、過去のヒロインをその役にはめていくのではなく、まず台本に登場したキャラクターのことを考え、こういう役にフィットする過去のヒロインがいるんじゃないか、というようにやっていきました。

 視聴者の方にも、「実はこの人もヒロインだった!」と知ってもられると面白いんじゃないかと。気づいてもらえればと。初めの頃は『なつぞら』が最終的にどれぐらいのスケールになるのか予想できていませんでしたが、過去のヒロインの方々が演じていただけるような役柄がたくさん出る豊かなドラマになればいいなと思いました。

ーー出演の発表が行われるたびに大きな話題となっていました。

磯:過去のヒロインの方がいると言うことは、その方が出ていた朝ドラをリアルタイムで見ていた世代がいます。例えば山口智子さんの『純ちゃんの応援歌』をリアルタイムで見ていた人は、山口さんと同じ年を重ねており、その人たちが今の山口さんの活躍を見れば、当時を振り返って「自分は、今はどうなんだろう」と考えるきっかけにもなる。そういう時間の経過を感じてもらえると、朝ドラの見方もまた変わってくるんじゃないかなと思います。

ーー広瀬すずさんと過去共演歴のある方々をキャスティングするというのも、意識的に取り組まれたのですか?

磯:広瀬すずさんが「この配役を面白いな」と思う人をキャスティングしたいと思いましたね。それはリリー(・フランキー)さんや中川(大志)さんなど、広瀬さんと共演したことがある、彼女がやりやすい人と、初めて共演する人やチャレンジする人をうまくバランスを取りながら配役できればと思いました。どうすれば彼女のポテンシャルを最大限に引き出せるのか常に考えていましたね。

 過去のヒロインとの共演も、広瀬さんはこれからキャリアを重ねていくので、例えば今回松嶋さんと共演した経験が、広瀬さんが松嶋さんと同じ年代になった時に生きてくるんじゃないかと思ったんですよ。役者さんは、年齢やキャリアによって演じ方や役柄がどんどん変化していく仕事なので、色んな年代の過去のヒロインの人と共演するのは、今後のキャリアをイメージする手がかりになったりもするんじゃないかなと思っていました。

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