『なつぞら』がスター俳優揃いの朝ドラとなった理由 広瀬すずを中心としたキャスティングの裏側

 NHK連続テレビ小説『なつぞら』が最終回を迎える。

 戦災孤児となり、父の戦友・剛男(藤木直人)に連れられ、北海道・十勝にやってきたなつ(広瀬すず)。大自然と、そこで生きる開拓者の一族の優しさや厳しさに育まれ成長し、当時草創期にあった漫画映画の世界で、アニメーターになることを夢見て上京。そこで出会う仲間とともに、子どもたちを楽しませるためにアニメーションを作り続けてきた。

 リアルサウンド映画部では、最終回を目前に、本作の制作統括を務めるNHKの磯智明にインタビューを行った。異例の朝ドラヒロイン総出演の裏側から、視聴者の話題をさらった千遥(清原果耶)の登場に込めた思いなどを語ってもらった。

「印象に残るようなキャスティングを」

ーーいよいよ朝ドラ100作目『なつぞら』が最終回を迎えます。

磯智明(以下、磯):朝ドラは100作まで続いてきたドラマなので、女性の成長の物語や、その家族に訪れる変化などといったフォーマットがある程度できあがっています。今回は、そこだけでは収まりきらないものを描きたいと思っていました。“酪農”と“アニメーション”は、ドラマのプロデューサーとして、以前から興味深く感じていた題材です。今まで朝ドラで色々なカルチャーが描かれてきた中で、アニメーションはなかなか手をつけにくい。なぜなら、完成したアニメーションを作るだけでも大変だけど、そこを描くために小道具や絵を1枚1枚を用意するのも、すごく大変な作業だからです。そこをチームとしてやりきったのは、達成感を感じます。もっと掘り下げることはできたと思うし、これからもアニメーションを題材にしたドラマができていってほしいなと。そもそもアニメーションの作り方がわからない人もいると思うので、それも知っていただきたいし、それが昭和30年代の頃から日本の産業としてあったということを知って欲しかったんです。

ーー過去のヒロイン再登場をはじめ、広瀬すずさんと再共演となるキャストなど、キャスティングに関する話題が大いに盛り上がりました。

磯:台本をもらった始めから登場人物が多いなと感じていたんです。その時点では北海道編だったから、その後東京に出てアニメーションを作ることや結婚することを考慮すると、とにかく出演者が多いドラマになるんだろうと。大森(寿美男)さんの脚本は、「1つのポジションに1つのキャラクター」という作りなんです。連続ドラマではよくあるのですが、親友だけど別の側面もあるというような、1つのポジションに2つ、3つのキャラクターを乗せるという作り方をしないんです。

 たとえば、煙カスミと亀山蘭子は普通だったら1つのキャラクターにまとめたりしてキャラクターを多面的に描くこともできるんですけど、大森さんはそういうことをやりたがらない人です。なので必然的に登場人物が多くなるため、なるべく印象に残るようなキャスティングをしたいと思ったんです。視聴者は、登場人物が増えることで区別がつきづらくなるから、役名というより役者で覚えるようになる。主演周りはオーディションで選んだフレッシュな人たちが揃うから、そうでない人はなるべく印象に残るようにキャスティングすることを念頭に置きました。幸いなことに今回台本ができあがるのが早かったんです。そのおかげで、色んな方々に出演をお願いできる時間がありました。

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