『ロケットマン』監督が明かす、『ボヘミアン・ラプソディ』との違いとエルトン・ジョンへの共感

 『キングスマン』シリーズのタロン・エジャトンが主演を務めた映画『ロケットマン』が8月23日より劇場公開されている。本作は、世界的ミュージシャンのエルトン・ジョンの半生を、数々の名曲と共に描き出したミュージカル・エンターテインメントだ。

 監督を務めたのは、製作のマシュー・ヴォーンと主演のタロン・エジャトンとは『イーグル・ジャンプ』でもタッグを組んだ、子役出身のイギリス人監督デクスター・フレッチャーだ。撮影途中で降板したブライアン・シンガーに代わり、世界中で大ヒットを記録した『ボヘミアン・ラプソディ』の最終監督も務めた彼に、『ボヘミアン・ラプソディ』と本作との違いや、エルトン・ジョンとの共感性などについて語ってもらった。

「『実在のファンタジーに基づく』というキャッチコピーにグッときた」

ーー今回の作品はあなたが監督を務めた『イーグル・ジャンプ』(2016年)でもタッグを組んだマシュー・ヴォーンから話をもらったそうですね。

デクスター・フレッチャー(以下、フレッチャー):そうなんだ。同じく『イーグル・ジャンプ』で組んだタロン(・エジャトン)主演で、エルトン・ジョンが題材のR指定のミュージカルをやろうとマシューに言われたんだけど、もうその時点でOKというぐらい乗り気だったよ。

ーーそもそもの題材と座組みに惹かれたわけですね。

フレッチャー:うん。それに、最初に聞いたこの作品のキャッチコピーにグッときたんだ。「Based on truth」ではなく、「Based on true fantasy」。「実話に基づくで」はなくて、「実在のファンタジーに基づく」というキャッチコピーにね。想像力を働かせながら、いろんな意味で自由にやることができるというところにすごく惹かれたんだ。アーティストの伝記ものって、ある種の化学式のようなものがあって、どうしても一辺倒になりがちだからね。

ーー撮影途中でブライアン・シンガー監督が降板し、あなたが最終監督を務めた『ボヘミアン・ラプソディ』(2018年)も音楽の伝記ものでしたよね。

フレッチャー:『ボヘミアン・ラプソディ』はいい例だよ。フレディ・マーキュリーは既に亡くなってしまっている。亡くなってしまった偉大なスターは、神格化されがちと言うか、本人が「いや、実はそうじゃなかったんだ」って言えないところがある。そういった意味では、どうしても美化されてしまうところがある。だけど、エルトン・ジョンは現役の存命しているアーティスト。しかもエルトンは、自分のダークな時期や暗い部分に関してもすごくオープンなんだ。そういう部分を包み隠さず言う人だから、逆に「もっとクレイジーだった」と言ってくれるんだよね。本当に何の制約もなく映画を作れるというのは、僕にとってすごく魅力的だったよ。

ーーパブリックイメージとして、エルトン・ジョンはすごくこだわりのある人物で、製作にも名を連ねたこの作品に関しても細かく指示をしているんだと思っていました。実際はそうではなかったわけですね。

フレッチャー:うん、まったくそうではなかった。なんせエルトンは50年にわたって第一線で活躍してきた人物で、グラミー賞を5度受賞したり、7枚連続でビルボード1位を獲得するアルバムを出したりと、ほとんど誰も経験してこなかったようなことを成し遂げてきたアーティストだ。そして世界中のポップスターの誰よりもお金を儲けて、誰よりも浪費した。本当にありとあらゆる人生の荒波を経験しているからこそ、僕たちにも自由を与えてくれる余裕があったんだと思う。常に人の目に晒されながら成長してきた彼だからこそという部分が大きかったんじゃないかな。

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