染谷将太が面白い! 『なつぞら』で“場”をつくる巧みな演技

 現在公開中の黒沢清監督最新作『旅のおわり世界のはじまり』でも、染谷は“クリエーター”に扮している。こちらで彼が演じるのは、日本のテレビバラエティ番組のディレクター。そしてこの映画の主役であり、劇中内の番組のリポーターを務めているのが前田敦子だ。

 映画のカメラも、劇中でテレビクルーが使用するカメラも、執拗に前田を捉え続ける。いずれも主体は彼女なのだ。そして本作での染谷こそ、“自然”に“場”に馴染むということを、非常に高いレベルでやってのけている。

(c)2019「旅のおわり世界のはじまり」製作委員会/UZBEKKINO

 映画としては彼は撮られる側であるが、劇中でのテレビクルーとしては、撮る側である。染谷が自身でも映画を撮っていることは有名だが、やはりそのリアルな経験が大きいのだろうか。この映画では、中心となる被写体である前田の「個」の存在を立て、染谷らクルーはあくまでクルーたち「全体」として存在している。その佇まいや言動は控えめで、限りなくリアリズムに寄せたものと見える。『なつぞら』とは真逆のアプローチで役に接近しようとしていることがうかがえるのだ。だがこれもまた、アプローチこそ違えど、“場”をつくる染谷のうまさなのだろう。もちろんそこには、「周囲を思いやる」ことで生まれる一体感があるはずである。

 『なつぞら』においては、まだ何をしでかすか未知数の染谷将太。なつたちの成長とともに、さらに進化していく神地の存在に注目である。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)〜全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、岡田将生、比嘉愛未、近藤芳正、中川大志、染谷将太、川島明、渡辺麻友、伊原六花、犬飼貴丈、田村健太郎、戸田恵子、井浦新、山口智子ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

関連記事