『いだてん』秀逸な「タイトルバック」はいかに生まれたか 映像作家・上田大樹に聞く

生身の役者には勝てない

――第25回からは四三に代わり田畑が主役となります。タイトルバックも変更となりますが、今回のバージョンでこだわった点はありますか。

上田:基本的には四三と田畑が入れ替わるというところで構成的な大きな変化があるわけではないのですが、やはり田畑を演じる阿部さんがとにかく面白いので印象が大きく変わります。なので、先日行った追加撮影も、もっといろんな表情がみたくてテイクを重ねてしまいました。田畑はすごく自由なキャラクターなので、よりはじける雰囲気にはなっているかと思います。

ーー見学した撮影では、田畑がストップウォッチを止めるカットが印象的でした。

上田:本編の中で印象的にストップウォッチを扱うシーンがあったので組み込ました。このカットも面白くするつもりはなかったんですが、阿部さんがやると面白くなっちゃいました(笑)。

ーー今後も第1部と同じようにアップデートはされていくのでしょうか。

上田:使ってない素材もまだあるので、アップデートはしていくつもりです。が、今回のような追加撮影も踏まえての大きな変更はもうない……はずです。

ーー上田さんが製作される映像はどれもジャンルや手法が違いますが、どういったものから映像のイメージを作っているのでしょうか。

上田:舞台の仕事をしていて、演劇的な手法からインスピレーションを受ける機会が多い気がしています。劇団ごとにカラーが違うので、それに合わせて映像を作っていくと自ずと手法も別のものになっていく。あとは対象となる人物から得るものでしょうか。実際、生身の役者さんたちの芝居を目の当たりにすると、映像でちょっと凝ったことをやっても「彼らには勝てない」と思うことも多いです。今回の阿部さんの撮影もまさにそうでした(笑)。

ーー映像製作を手がける人々が増え、多くの人が映像に当たり前のように触れる時代となっています。そんな時代だからこそ映像作家として上田さんが心がけていることは?

上田:「すごい映像を作りたい」という意識はあまりなくて、どうやったら心を動かせるのかということだったり、「観ていて楽しい」と皆さんに思ってもらえることを一番大事にしています。

(取材・文=石井達也)

■放送情報
『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』
[NHK総合]毎週日曜20:00~20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00~18:45
[NHK BS4K]毎週日曜9:00~9:45
作:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
出演:阿部サダヲ、中村勘九郎/綾瀬はるか、生田斗真、杉咲花/ 森山未來、神木隆之介、/大竹しのぶ、役所広司
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/idaten/r/

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