『なつぞら』岡田将生の言葉が胸に沁みる なつがアニメーターとして描き続ける意義とは

 アニメーションとは、ラテン語で魂を意味する「アニマ」という言葉に由来すると、下山(川島明)がかつて話していた。動かないものに、“魂を与えて動かす=命を与える”ことなのだと。そんな彼の言葉がふと思い出されるようだった。

 『なつぞら』(NHK総合)第68話では、千遥のことでショックを受け、思い悩むなつ(広瀬すず)の姿がより克明に描かれた。彼女の口から出てきた言葉は、「奇跡なんてないんだわ」にとどまらない。

「何のために私は生きているんだろう?」
「自分だけ好きな夢追って、それでいいんでしょうか?」

 「開拓してこい」という泰樹(草刈正雄)の言葉を胸に、東京でも夢と希望を抱いて精一杯頑張ってきたなつ。しかし千遥の一件を知って、なつは今の自分をめぐってまた別の葛藤を抱きはじめる。そんな彼女に亜矢美(山口智子)と咲太郎(岡田将生)はそっと寄り添おうとするが、2人がかける言葉の一つ一つはどれも深く、考えさせられるものであった。

 亜矢美は「生きているんだから、しょうがない。生きている理由なんて、どこにもないんじゃないの? 自分で作るしかないのよ、きっと」と投げかける。そして、咲太郎は千遥のために「描け」となつの背中を押すのだった。咲太郎は家族の絵を見せて、なつに訴えかける。「この絵を生かそうとして、それで漫画映画を作ろうとしたんだよな」と。“絵を生かす”。そのためにはきっと、冒頭に書いた下山の言葉を借りるのであれば、まさしくなつの手によって“魂を与えること”が必要なはずだ。そして、それによってきっとなつ自身も救われることがあるはずだ。

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