『アラジン』成功の理由を分析 キャスティングと監督の選定に見る、ディズニーのプロデュース力

 くわえて、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『シャーロック・ホームズ』などのガイ・リッチーが監督しているのもポイントだ。もともとガイ・リッチー監督のファンである観客は、アニメ版に忠実に作られている本作には不満を感じるかもしれない。だが、彼の持ち味は深みのあるドラマを作り上げることよりも、映像のケレンやスタイルにある。TVのスパイシリーズの映画化作『コードネーム U.N.C.L.E.』が、内容の面で素晴らしいものになったのも、スパイという表面を取り繕う存在が、ガイ・リッチーの資質にピッタリとマッチングしたからである。

 その意味で、すでにしっかりとしたドラマができあがっている『アラジン』という題材を再映画化する際に、ドラマ部分よりも必要とされるだろうケレン味やパワフルな演出というのは、ガイ・リッチー監督が持ち合わせている能力に適合する。ウィル・スミスのキャスティング同様、今回のディズニーのプロデュース力は非常にうまくいっているといえよう。

 既存の人気アニメ作品を忠実に実写化する……。一見すると安易な仕事にも思えるが、適切なピースを適切な場所に配置する手腕や、現在の感覚や要素をとり入れていくことなど、それを成功させるには、様々な工夫が必要になる。それをしっかりと成し遂げ、大ヒットにつなげたという部分に関して、今回の『アラジン』は高く評価できる作品である。

■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter映画批評サイト

■公開情報
『アラジン』
全国公開中
監督:ガイ・リッチー
脚本:ジョン・オーガスト、ガイ・リッチー
音楽:アラン・メンケン
出演:メナ・マスード、ナオミ・スコット、ウィル・スミス
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2018 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved
公式サイト:https://www.disney.co.jp/movie/aladdin.html

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