『緊急取調室』『特捜9』が視聴率好調! 「テレ朝刑事ドラマ」を代表するシリーズへ成長するか

 『特捜9』は先にも述べた通りまだ2シーズン目だが、前身の『~9係』まで遡ればその歴史は長い。『~9係』では渡瀬恒彦が主演を務め、井ノ原は準主役のポジションだった。2006年から放送されていたが、2017年3月に主演の渡瀬が亡くなったため、同年4月から放送のseason12は直前まで出演予定だった渡瀬不在のまま制作することを余儀なくされた。

『特捜9』

 そして2018年から新たに井ノ原を主演とする続編『特捜9』がスタートし、井ノ原、羽田美智子、津田寛治、吹越満、田口浩正ら、ほとんどのメンバーが『~9係』時代から引き続きの出演で相変わらずの個性を発揮する中、新たにレギュラーメンバーに加わった寺尾聰と山田裕貴の存在もまたユニークだ。寺尾演じる特捜班の班長・宗方朔太郎は、捜査に走り回るメンバーたちとは一定の距離を保ち、捜査とは無関係に思える自由気ままな単独行動を取りがちだが、実はその行動が後々事件解決に大きな影響を与えることが多く、目が離せない存在だ。山田演じる若手刑事の新藤亮は、若さゆえに気持ちが先走り、時には先輩たちと対立するなどお騒がせキャラの面もあるが、憎めない特捜班のマスコット的存在になっている。

『特捜9』

 そんな個性派メンバーが揃った特捜班を、井ノ原がリーダー然として強引に指揮するのではなく、各個性を潰さないように穏便にまとめようとしている姿が、中間管理職のジレンマや哀愁を漂わせながらも、思わず応援したくなる心優しきリーダー像になっている。ドラマ全体にもどこか和やかな空気が流れており、肩の力を抜いて見られるところが魅力だ。

 『緊急取調室』と『特捜9』は、全く異なる特徴を持っており、前者のような緊張感あふれるサスペンス刑事ドラマと、後者のような和み系ミステリー刑事ドラマでは、人により好みは分かれるところかもしれないが、こうして様々なレパートリーの刑事ドラマを揃えているところが、「刑事ドラマといえばテレ朝」と言われる所以だろう。

 『科捜研の女』に代表されるシリーズ物のドラマの醍醐味は、回を重ねるごとに物語世界が重層化していくことだ。その積み重ねがあるからこそ、物語やキャラクターに深みが増し、ますます面白くなっていく。しかし、安易な積み重ねではその深みは生まれない。その場しのぎや目先のことだけを考えたストーリーではなく、過去を踏まえ未来を見据えてシリーズの一貫性を保ちながら、一歩一歩進んでいく姿勢がカギとなる。『緊急取調室』も『特捜9』もそれぞれの特徴を生かした積み重ねが、視聴者を楽しませ続ける長寿ドラマシリーズへの道につながるはずだ。

■久田絢子
新聞ライター兼編集(舞台担当)→俳優マネージャー→劇場広報→伝統芸能(主に能楽)関連お手伝い、と舞台業界を渡り歩き現在フリーライター。ウェブ「エンタメ特化型情報メディアSPICE」「goo映画」等で舞台や映画等エンタメ関連記事を執筆中。

■放送情報
『緊急取調室』
テレビ朝日系にて、毎週木曜21:00~21:54放送
出演:天海祐希、田中哲司、速水もこみち、鈴木浩介、大倉孝二、塚地武雅、でんでん、小日向文世
脚本:井上由美子ほか
音楽:林ゆうき
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:都築歩(テレビ朝日) 松野千鶴子(アズバーズ)
演出:常廣丈太(テレビ朝日) 本橋圭太(アズバーズ) ほか
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/kintori/

『特捜9 season2』
テレビ朝日系にて、毎週水曜21:00〜21:54放送
出演井ノ原快彦、羽田美智子、津田寛治、吹越満、田口浩正、山田裕貴、原沙知絵、寺尾聰
脚本:徳永富彦、岡崎由紀子、林誠人、真部千晶、瀧川晃代 ほか
監督:鈴木浩介、新村良二、田村孝蔵、豊島圭介、田村直己、細川光信
ゼネラルプロデューサー:大川武宏(テレビ朝日)
プロデューサー:神田エミイ亜希子(テレビ朝日)、金丸哲也(東映)、森田大児(東映)
制作:テレビ朝日/東映
(c)テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/tokusou9_02/

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