吉高由里子と新垣結衣、現代人に寄り添えるのはどっち? 『わた定』と『けもなれ』の決定的な違い

 それからもう一つ、『けもなれ』と『わた定』の大きな違いに、「仕事後のビール」のあり方の違いがある。

 『けもなれ』の晶は、深夜まで仕事した後に、「5tap」というオシャレな店でクラフトビールを飲んでいた。しかし、常連客はちょっと面倒くさそうな人たちが多く、繰り広げられる会話も恋バナや下ネタなど、ちょっと面倒くさそう。ビールの泡がどんどん消えていく様を目の前にして、モヤモヤした会話を続けるシーンも多く、仕事後にスッキリするどころか、モヤモヤした思いが増幅しそうな印象があった。

 一方、『わた定』結衣の行きつけの「上海飯店」は、定時で上がると間に合う「ハッピーアワー」の半額ビールがあって、店主の王丹(江口のりこ)も、常連客たちも、愉快な人ばかり。純粋に仕事や日々の些末な出来事を忘れられる、楽しいビールだ。

 さて、現実の世界を見渡すと、『わた定』の結衣のように、優秀な職場の緩衝材的存在はそういないだろうし、元婚約者のような頼れる上司もなかなかいないだろう。その一方で、『けもなれ』の晶のように、断れない八方美人や、同じ場所で逡巡し続ける人は思いのほか多いようだし、「ドラマのように簡単に解決しない」問題もたくさんある。

 様々な世代や様々な立場の人たちの、仕事とのかかわり方・考え方の違いをリアルに描きつつも、ドラマとしての爽快感を与える『わたし、定時で帰ります。』と、抱える悩みと「簡単に解決しない」現実をリアルに描いた『獣になれない私たち』。両者に共通する部分はあるが、主眼を置いた場所の違いが「見やすさ」の違いにつながっているのではないだろうか。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
火曜ドラマ『わたし、定時で帰ります。』
TBS系にて、毎週火曜22:00~放送
原作:朱野帰子『わたし、定時で帰ります。』シリーズ(新潮社刊)
出演:吉高由里子、向井理、中丸雄一、柄本時生、泉澤祐希、シシド・カフカ、内田有紀、ユースケ・サンタマリアほか
脚本:奥寺佐渡子、清水友佳子
演出:金子文紀、竹村謙太郎
プロデューサー:新井順子、八尾香澄
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/watatei/

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