“ヒロインと結ばれない”朝ドラ定番に変化? 「幼なじみ枠」大勢出演の『なつぞら』を機に分析
例えば、『ごちそうさん』では、め以子(杏)の幼なじみで、ヤンチャだが、優しく、正義感が強く、いつも陰で支えてくれる源太を和田正人が演じていた。め以子の夫・悠太郎が満州に渡る際には、め以子のことを頼まれ、「たった一人の人生の相方」として大切な存在だと告げ、見守る約束をする。さらに、悠太郎の帰りを待ち続けるめ以子に、突然、「ほなお前、わしと一緒になる? お互い一人やし」と突然プロポーズをすることで、め以子から「(悠太郎がいなくなって)まだ二年だし!」と言う言葉を引き出し、元気にさせる優しさもあった。
また、『花子とアン』では、ヒロイン・花子(吉高由里子)のことをひたすら一途に思い続けた幼なじみの朝市(窪田正孝)が人気となり、40歳にして結婚するスピンオフ『朝市の嫁さん』が作られる展開となった。
『おひさま』の幼なじみ・タケオ(柄本時生)に至っては、いつも畑仕事をしながらヒロイン・陽子(井上真央)の姿を遠くから見守り、「陽子はおひさま。笑っててほしいんだ」とまるでファンのような賛辞を送り続けていた。しかも、戦地から復員したときにはすでに人妻になっていた陽子にプロポーズし、玉砕してもなお生涯見守る、気の毒なほどの健気な存在として描かれていた。
ちなみに、『ちりとてちん』の同級生・和田清海の兄(友井雄亮/元・純烈メンバー)の場合は、小学生時代のヒロインに初対面で暴言を吐いてカバンで殴られ、それを機に一目惚れしてプロポーズ→後に再びプロポーズし、いずれも玉砕→ヒロインとの共通の友人と結婚するというパターンだった。
他にも、双子のヒロインの一方に恋心を抱きつつ、やがてもう一方と結婚する『だんだん』の幼なじみ(久保山知洋。ネット上での通称は「タンバリン」)のような例もあったし、『ウェルかめ』の幼なじみ(武田航平)のようにヒロイン(倉科カナ)に片思いを続け、結婚してしまうと聞いたときには、ヒロインの両親に結婚を申し込んで、本人にもプロポーズするという謎の暴走ぶりを見せた例もあった。
そんな「幼なじみがヒロインと結ばれない」パターンに変化が見られたのは、おそらく堀北真希主演の『梅ちゃん先生』の松坂桃李あたりから。初恋は別の相手だったが、最終的に幼なじみと結ばれ、ご近所共同体の地盤が固められていく。
さらに、『ひよっこ』の場合は、ヒロイン・みね子(有村架純)に同性と異性の幼なじみが一人ずついたが、異性の三男(泉澤祐希)がずっと思いを寄せていたのは、ヒロインではなく、その親友で後に女優になる華やかな時子(佐久間由衣)のほうだった。しかも、みね子が三男に恋心を抱くことも一切なく、幼なじみ3人の関係の中で唯一「恋」と関係ない場所にいるのがヒロインだったのは、いま考えてもなかなか斬新である。