木村拓哉は平成が生んだ唯一のスターである 2番手・3番手の時代、絶対的主演を経た今後への期待

 平成が終わる――。

 30年に渡るこの時代のトップを走り続けた「圧倒的スター」といえば誰だろう。いろいろ考えてみたが、やはり1人しか思いつかない。木村拓哉だ。

 今、主演俳優の名前だけですべてが語られるプレイヤーが他に存在するだろうか。興行成績、視聴率、賞の有無……マスコミはすべて「キムタク主演」の6文字を冠につけて記事を書く。

 平成という時代の終わりに、彼と同じ時間を生きてきた一視聴者として、俳優・木村拓哉という存在について考えてみたい。

 木村拓哉=絶対的主演、ととらえている人も多いと思うが、じつは最初からそうだったわけではない。単発ドラマでは10代の頃から何作か主役も務めたが、連続ドラマでは2番手、3番手の時代が続いた。たとえば92年の『その時、ハートは盗まれた』ではヒロインに憧れられる先輩の役だし、93年の『あすなろ白書』(ともにフジテレビ系)でも主演は石田ひかりと筒井道隆。木村演じる取手治はヒロイン・なるみに恋するものの最後は敗れ、ケニアに旅立つという役どころだ。

 が、この『あすなろ白書』での切なさと色気とが混在した木村の演技に視聴者は沸いた。のちに「あすなろ抱き」として語り継がれるバックハグを決め、なるみに「俺じゃ、ダメか」と囁く取手の姿に魂を持って行かれた女子は少なくないと思う。

 その後、94年の『若者のすべて』(フジテレビ系)、95年の『人生は上々だ』(TBS系)、いくつかの単発作品を経て、木村拓哉は96年に自身のブランドを確立するドラマで主演を果たす……そう、最高視聴率は36.7%を記録した『ロングバケーション』(フジテレビ系)である。

 山口智子演じる売れないモデル・南と、ピアニストとして自分の才能に自信が持てない瀬名の年の差恋愛を描いた『ロンバケ』は社会現象となった。月曜9時には街からOLが消え、ビルの窓からスーパーボールを地面に投げるカップルが続出。あ、そう言えば私も湾岸まで屋上に置かれたあの看板を探しに行った気がする……ちょっと痛い。

 『ロングバケーション』で木村は「女性に対して不器用、言葉はぶっきらぼうだが芯は優しく行動すべてがカッコ良い」という、俳優としてひとつの軸を構築。そしてこの軸は『ラブジェネレーション』『HERO』(ともにフジテレビ系)、『ビューティフルライフ』『GOOD LUCK!!』(ともにTBS系)等の大ヒットドラマへと受け継がれていく。ここではその軸を「第一形態」と定義したい。

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