『SICK’S』の真骨頂は“何でもありの悪ふざけ感覚”!? 堤幸彦監督による遊び心溢れた映像表現
そして、2人の会話に登場したSPECを超える力と噂される「ホリック」が重要なキーワードとなるのではないかと思う。ニノマエイトはSPECを獲得した人類の行き過ぎた進化を「病い」だと語る。果たしてSPECは人類を進化へと導く奇跡なのか、自らを滅ぼす呪いなのか? このあたりに本作のテーマはあるのだろう。
謎が謎を呼ぶストーリーに目が行きがちだが、同じくらい面白いのが監督の堤幸彦による遊び心に溢れた映像表現の数々だ。
堤は、現在のテレビドラマにおける映像表現を切り開いてきたパイオニア的存在だ。『金田一少年の事件簿』(日本テレビ系)でミステリードラマのフォーマットを確立し、オールロケによるカット数の多いMV的な映像を駆使することで、テレビドラマにおける新しい映像表現を次々と開拓していった。『トリック』(テレビ朝日系)では、小ネタを散りばめていくアドリブ性の高い会話劇を生み出し、テレビドラマにコントバラエティ的な面白さを持ち込んだ。そして『SPEC』ではCGを多用することで「時間の止まったシーン」などの超能力の可視化に挑んでいた。『SICK’S』にも、SPECホルダーによるユニークな特殊能力が次々と登場し、『SPEC』以上に超能力バトルとしての面白さは強まっている。
劇中では御厨静琉を筆頭に、人智を超えた巨大な力に翻弄される人々の悲しみがシリアスに描かれるのだが、一方でくだらないギャグが次々と連呼される。ふつうこれだけシリアスで哲学的なストーリーを展開すると、笑いの要素はどんどん失われていくものだが、堤は“笑い”を放棄せず、シリアスな物語の中に平気でぶち込んでいく。そのため、闇鍋的な面白さがあるのだが、この何でもありの悪ふざけ感覚こそが『SICK’S』の真骨頂ではないかと思う。
3月22日の深夜からパラビで『覇乃抄』が配信されるのを前に、『恕乃抄』もパッケージ化され、以前よりもアクセスしやすい環境が整っている。何が飛び出すかわからない闇鍋的な『SICK’S』ワールド。この機会に是非、堪能してほしい。
■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。
■リリース情報
『SICK‘S 恕乃抄 〜内閣情報調査室特務事項専従係事件簿~』
Blu-ray&DVD発売中
◆Blu-ray
価格:14,400円+税
仕様:2018年/日本/カラー/本編217分+映像特典(収録分数未定)/16:9LBビスタサイズ/片面1層/音声:日本語リニアPCM2.0chステレオ/日本語字幕:なし/1話~5話/4枚組(本編3枚+特典ディスク1枚)
◆DVD
価格:11,400円+税
仕様:2018年/日本/カラー/本編217分+映像特典(収録分数未定)/16:9LB/片面1層(特典ディスクのみ片面2層)/音声:日本語デルビーデジタル2.0chステレオ/日本語字幕:なし/1話~5話/4枚組(本編ディスク3枚+特典ディスク1枚)
【特典映像】
●撮影エピソード集(メイキング) コンプリートVer.
●SICK'S恕乃抄 SPOT集
●ピーチ医者植田もも子の解説集
●主題歌 Alisa「walls」 (Official Music Video)
●SICK'S覇・厩乃抄 制作発表
【封入特典】
Specialブックレット(カラー28ページ)
出演:木村文乃、松田翔太、黒島結菜、新川優愛、小林万里子、波岡一喜、矢野浩二、高杉 亘、若村麻由美、岡田義徳、池田大、松本穂香、宇垣美里(TBSアナウンサー)、眞島秀和、佐野史郎、哀川翔、宅麻伸(友情出演)、竜雷太
原案:西荻弓絵
主題歌:Alisa「walls」
プロデュース:植田博樹
監督:堤幸彦
製作著作:TBS
発売元:TBS
販売元:TCエンタテインメント
(c)TBS