『トクサツガガガ』吉永証プロデューサーインタビュー

『トクサツガガガ』が伝える、他者を認める寛容さ 目指したのは「正義にこだわらない」ドラマ

 毎週、多様なジャンル・スタンスの「オタクあるある」に頷き、笑い、「オタバレ」の危機にハラハラし、オタク的名言に心を打たれ、劇中特撮のクオリティの高さに打ちのめされてきたNHKのドラマ10『トクサツガガガ』。視聴者たちの熱い支持を得た本作が、本日3月1日にいよいよ終了する。そこで、別れを惜しむべく、本作のチーフプロデューサーでNHK名古屋局制作部の吉永証氏に、改めてこのドラマが誕生したきっかけや、作品に込めた思いなどについて伺った。

「もともと金曜夜10時の『ドラマ10』の枠は、『セカンドバージン』などをはじめ、シニアの女性を対象にした作品を多数作ってきました。しかし、30〜40代くらいのもう少し若い層に見ていただけるよう、様々な企画を探していた中で出会ったのが『トクサツガガガ』だったのです」(吉永証、以下同)

 

 いくつかの候補の中に、若い女性ディレクターが提案したという丹羽庭氏による原作の同名コミックのドラマ化があった。決定のポイントは、「若い人が興味を持つだろう特撮というジャンル」「オタクの話」ということ、そして、原作・ドラマともに「自分の好きなモノを大事にすること」が軸にあることだった。

 ドラマ化にあたって、原作の丹羽氏から出された要望は、「作品の世界観や人物像を大切にしてほしい」「特撮がテーマだからといって、正義にこだわって、誰かのために何かやらなきゃいけないとか、勧善懲悪のドラマにしないでほしい」こと。

 「ドラマになると、どうしても主人公が能動的になり、何か解決したり、変えたりするものになりがちですよね。でも、この作品の主人公は正義を振りかざさないし、能動的じゃないし、解決もしない。そのため、ストーリーを作る上で、正義を求める主人公にしないことと、日常の延長線上にあるささやかな『あるある』エピソードなどに共感してもらえるようにすることなどを大切にしました」

 確かに、好きなことに対する熱量が凄まじい一方で、リアルの生活はグウタラだったり、大人げなかったり、正義じゃないところが、ヒロイン・仲村叶の大きな魅力となっている。演じる小芝風花は、可愛く凛々しく、ズッコケ感もあって、まさにハマり役。だが、このドラマを観るまでは正直、もっと優等生イメージの女優だったが……。

 「小芝さんは非常に表情豊かなんですよね。だから、キリッとしている部分も、ズッコケている部分も、自在に表現ができる。特に、仲村叶は、他者から見えるものと、内面的なこと・思っていることが違うというのが大きな特徴で、漫画の中でもドラマでも、モノローグがたくさん出てくるんです。それを表現するには、綺麗なだけの女優さんではダメ。お芝居が優れていないと表現できません」

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