『みかづき』は高橋一生から見た“家族の物語”に 原作小説とドラマが異なる作風になった理由

 「私ね、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在だと思うの。太陽の光を十分吸収できない子たちを、暗がりの中、静かに照らす月」

「みかづき」森絵都(集英社)

 高橋一生、永作博美主演のドラマ『みかづき』(NHK)が最終回を迎える。原作は森絵都の同名小説。昭和から平成の時代にかけて、三世代にわたり学習塾に情熱を傾ける人たちの姿を描く物語だ。

 原作小説が持つ雰囲気とは大きく異なるポップで愛らしい第1話で視聴者を驚かせたが、第2話では八千代塾の躍進と吾郎(高橋一生)たちの家族の形成、第3話では塾のありかたをめぐる吾郎と千明(永作博美)の衝突と吾郎の失踪、第4話では塾同士の過酷な抗争と千明からの周囲の人物の離反と、コミカルなテイストは残しつつも徐々にシリアスな物語にシフトして視聴者を引き込んできた。大胆な改変を行った脚本の水橋文美江と演出の片岡敬司の手腕が光る。

 それにしても、ドラマの中心にあるのは、主演の高橋と永作の魅力に他ならない。2人による高速テンポの会話のやり取りがドラマのリズムを作り出し、スピーディーな展開を支えている。また、第2話で「合併!?」と声が裏返ったり、酔っ払って寝転んで「やだもん」「やっ!」とスネたりするところは、まさに高橋ならでは。同じく第2話で怒りをこらえつつイヒッと笑ったり、第4話で無料の補習教室のアイデアに吾郎に賛同してもらって喜びを露わにするところなどは永作にしか作り出せない千明像だった。第4話で再会シーンでは、両者の息の合ったところと演技における運動神経の良さを感じさせた。2人ともホント可愛い。

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