『家売るオンナの逆襲』も好調 “生身の女”ではない、“ロボット型ヒロイン”の時代は続く!?

 ドラマは視聴率が全てではないけれど、数字を見て気づくこともある。2010年代、女性が主人公の連続ドラマで最高視聴率を取ったのは『家政婦のミタ』(日本テレビ系)。松嶋菜々子演じる“笑わない”家政婦・三田が、母親を亡くした一家に住み込み、家事そのほかをバリバリこなしていく物語だった。また、第5期まで年間トップの視聴率を獲得しているのは『ドクターX ~外科医・大門未知子~』(テレビ朝日系)シリーズ。神業のような手術の腕をもつ未知子(米倉涼子)が、大学病院の医師たちを差し置いて難しい手術を成功させる。その痛快さで人気を得た。そして、現在は『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)が1月クール最大のヒットに。これは2016年に放送された『家売るオンナ』の続編で、その成功により間違いなく主演の北川景子にとっての代表作となり、シリーズとしても今後、『ドクターX』になりえるポテンシャルを秘めている。

 『家政婦のミタ』の三田と『ドクターX』の未知子、そして『家売るオンナの逆襲』の万智に共通するのは、めっぽう仕事ができるが、いっさい妥協をせず、他人の言うことを聞かず、ほとんど感情を見せないということ。ドジで未熟だけど夢に向かって頑張り泣き笑いする朝ドラのような従来型ヒロインとは正反対で、まるでロボットのよう。つまり、ヒットする女性のドラマはどれもこのタイプになってきている!?

 だが、三田が最後に自分の悲しい過去を打ち明け、未知子が麻雀をしたり卓球に興じたりして人間らしい面を見せるのに対し、万智の私生活は描かれない。上司の屋代(仲村トオル)と結婚したが、万智は仕事で外泊するときも世界の名物料理を作り、屋代が食べられるように用意しておくらしい。まさに死角なしのパーフェクト・ヒューマン。高性能のAIを搭載したサイボーグのような妻なのである。

 2018年も7月クールでは『義母と娘のブルース』(TBS系)で綾瀬はるかが演じた亜希子がロボットのようだった。大企業に勤め、そこで30代にして営業部長となったというスーパーキャリアウーマンで、仕事のためなら土下座も腹踊りの芸も厭わない。結婚相手の連れ子に会うときもまず名刺を差し出すというビジネスライクな言動がホームドラマとしては異色だった。10月クール『忘却のサチコ』(テレビ東京系)で高畑充希が演じたサチコもこのカテゴリーに入る。サチコは書籍編集者で、職場では椅子の上に正座し、おじぎの角度もぴったり直角。そんなサイボーグのような彼女が結婚式当日に花婿失踪という致命的なエラーを経験し、そこから心のダメージを回復させていくさまが描かれていた。

 なぜロボット型ヒロインが受けるのか? と考えてみると、まず「笑いを取りやすい」キャラクター造形だということが挙げられる。『家売るオンナの逆襲』では万智が部下たちに「ゴー!」と号令をかけるスパルタぶりが笑えるし、それで周囲から恐れられたり呆れられたりという笑いの構図もできる。ロボット型ということはリアルに考えれば“コミュ障”で、相手にとってはスマートスピーカーと会話しているよう。万智の夫・屋代も「どうも話がうまく伝わらないなぁ」と首をひねるほどだから、そこにもおかしみが生まれる。

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