『進撃の巨人』『NARUTO』『モンスターハンター』……日本IPのハリウッド実写化が加速した背景

 ハリウッドから見て、日本の人気アニメやゲームのタイトルを実写化することのアドバンテージは大きい。2017年の世界の国別映画興行収入ランキングを見ても、日本はアメリカ、中国に続いて第3位である。この世界第3位の市場に、すでに作品のファンが存在していることは大きなプラスとなる上、日本のアニメやゲーム作品は、中国や韓国など他のアジア諸国や北米、ヨーロッパにも一定数のファンがいる。また製作の際にも、もともと完成されたビジュアル要素が存在することで、例えば文字から映像を起こさなくてはならない小説などと比べても、実写化が容易である。

 一方で、日本のアニメやゲームのハリウッド実写化で成功を収めることのハードルは、決して低くはない。過去には、原作とかけ離れたストーリーやキャラクター変更を行うことによって、既存のファンの支持を得られなかったタイトルも多かったが、原作への忠実性を求めるオーディエンスの目は年々厳しくなっている。一つの間違いが、ファンを敵に回すことにつながり、結果として企画そのものをダメにしてしまうことがある。前述の『ゴースト・イン・ザ・シェル』は、草薙素子役に白人であるスカーレット・ヨハンソンが起用されたことに対し、アメリカやその他の地域で批判が相次いだが、ディズニーで実写化が進んでいる『ムーラン』で白人がヒロインの恋愛相手になるという噂が流れた際にも同様の反応が見られた。また、スクリーンに映る俳優だけではなく、製作に関わる監督やプロデューサーの多様性の確保も課題の一つである。例えば今年最も大きな話題を作った映画の一つである『クレイジー・リッチ!』がアジア系の俳優や監督で作ることにこだわったように、日本のIPが原作の作品でも、原作がもつ文化的背景まで理解した人を積極的に起用する動きがある。ただし、急速に変わるハリウッドのエンタメ業界とはいえ、そこで決定権をもつ人材に、そこまでの多様性があるかは疑問が残る。

 ハリウッドで実写化が進んでいるのは、上に出てきた映画だけではない。『ソードアート・オンライン』や『ONE PIECE』など、超ビッグタイトルの実写ドラマ化企画もある。ぜひとも観てみたいものから、どういったものができるのか全く想像のつかないものまで様々だが、今後日本のIP原作の作品がアメリカ国内外で成功していけば、ハリウッドのプロデューサーたちによる日本のIPへの注目は、さらに高まることだろう。近未来SF系アクションから異世界ファンタジーまで、あらゆるジャンルが揃う日本のアニメ・ゲーム作品だが、今後ハリウッドのアイデア工場になる日がいつか来るのだろうか?

■神野徹
北海道出身。カリフォルニア大学ロサンゼルス校で映画プロデュースを学び、その後メジャースタジオの長編映画企画開発部門などで経験を積む。

参照:

https://variety.com/2018/film/asia/my-hero-academia-movie-legendary-1202992783/
https://www.ign.com/articles/2018/11/20/why-pokemons-first-live-action-movie-features-detective-pikachu-instead-of-ash-ketchum
https://variety.com/2018/gaming/news/mega-man-live-action-capcom-1202968788/
https://deadline.com/2018/07/gundam-live-action-movie-legendary-sunrise-anime-expo-1202422031/
https://deadline.com/2018/10/my-hero-academia-movie-live-action-legendary-detective-pikachu-1202488986/
https://deadline.com/2017/01/attack-on-titan-u-s-movie-warner-bros-producer-david-heyman-1201888133/
https://variety.com/2018/film/news/nintendo-illumination-animated-mario-movie-1202683852/
https://www.mpaa.org/wp-content/uploads/2018/04/MPAA-THEME-Report-2017_Final.pdf

■リリース情報
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発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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