町田啓太は“2.5枚目”キャラがハマる? 『中学聖日記』有村架純と吉田羊に向ける絶妙な困り笑顔

“2.5枚目”キャラで独自のポジションを築く

 『中学聖日記』に見る町田啓太の善良さは、他作品でも光っている。今年の冬にオンエアされた『女子的生活』(NHK)で演じた後藤忠臣役も良かった。元カノがつくった借金のために身ぐるみ剥がされ無一文になった後藤。窮地の彼が頼ったのは、高校時代の男友達・小川(志尊淳)だった。しかし、数年ぶりに再会した級友は見違えるような美女に変身しており、彼がトランスジェンダーであることを知る、という役どころだ。

 この後藤は、『中学聖日記』の勝太郎に輪をかけたお人好し。単純でおバカなところがチャームポイントで、町田の人なつっこい笑顔が、このキャラクターに説得力をもたらしていた。首をかきながら、てへっと困ったように笑う仕草は、一歩間違えるとあざとくなるのだが、町田がやると不思議としっくり来る。

 家族との間にしこりを抱える小川が仕事の都合でひとり帰郷したことを知るや一目散に駆けつけるところも、実に町田らしい演技だ。決してヒーロー然としたカッコ良さはない。「何で来たの?」と問われても「俺も正直よくわかんない」とヘラヘラ笑って首を傾げるだけ。しかも、その後、小川と兄(鈴木裕樹)が喧嘩をするシーンでは空気も読まず大号泣。全然カッコよくない、むしろちょっとズレている後藤だが、そこがたまらなく愛おしいと評判をとった。

 町田啓太自身は、「イケメン」よりも「ハンサム」という言葉の方がしっくり来る正統派の2枚目顔。だが、役者としてはそんな端麗な容姿を活かした役どころより、ややズレた“2.5枚目”的な立ち位置の方が光っているように見える。

『jam』

 そんな町田の善良さとちょっとズレた抜け感が見事にハマっているのが、12月1日から公開の映画『jam』だ。演じるのは、瀕死の重傷を負った恋人の意識回復を望むタケル役。神のお告げを聞いたタケルは、恋人が目覚めるための願掛けとして、1日に3つ善いことを実践している。そんな迷信を愚直に信じる善良さも嘘臭くならないのが、町田啓太の個性だ。

 しかも、とてもいい人なのにどこかズレている部分が見え隠れして、そこに人間のおかしみとそこはかとない狂気が感じられる。混じりけのない町田の善良さは、一服の清涼剤のようでもあり、ある意味一番歪んでしまっている人間にも見えるのだ。『中学聖日記』を観ながら、このアクのなさが魅力である一方、役者としての弱さにもなるのかなと懸念していたが、同作で早速その危惧は覆された。十八番の善良なお人好しを軸にしながら、今後ますます役柄の幅は広がっていくだろう。

 そうした期待も含めて、まずはこの先の『中学聖日記』に注目だ。原口との恋に振り切ったように見え、まだどこか聖への想いを残しているようにも映る勝太郎。このまま善良な役どころで終わるのか。それとも、『jam』で見せたような善良さの中に孕んだズレや狂気を発していくのか。町田が演じる勝太郎に、物語の行方がかかっている。

■横川良明
ライター。1983年生まれ。映像・演劇を問わずエンターテイメントを中心に広く取材・執筆。人生で一番影響を受けたドラマは野島伸司の『未成年』。Twitter:@fudge_2002

■公開情報
火曜ドラマ『中学聖日記』
TBS系にて、毎週火曜22:00~23:07放送
出演:有村架純、岡田健史、町田啓太、マキタスポーツ、夏木マリ、友近、吉田羊、夏川結衣、中山咲月
原作:かわかみじゅんこ『中学聖日記』(祥伝社フィールコミックス)
脚本:金子ありさ
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、坪井敏雄
主題歌:Uru「プロローグ」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/chugakuseinikki_tbs/

■公開情報
『jam』
12⽉1⽇(⼟)より、新宿バルト9ほか全国公開
エグゼクティブプロデューサー:EXILE HIRO
監督・脚本:SABU
出演:⻘柳翔、町⽥啓太、鈴⽊伸之、秋⼭真太郎、⼋⽊将康、⼩澤雄太、⼩野塚勇⼈、佐藤寛太、野替愁平、筒井真理⼦
配給:LDH PICTURES
2018/⽇本/カラー/シネスコサイズ/5.1ch/102分
(c)2018「jam」製作委員会
公式サイト:https://ldhpictures.co.jp/movie/jam/

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