『アニゴジ』は“ゴジラ作品”としてどうだったのか? 3作かけて向き合った壮大なテーマ

 4年の歳月をかけ制作されてきた、アニメーションによって表現されたゴジラの劇場用作品、通称『アニゴジ』3部作も、今回の『GODZILLA 星を喰う者』 で、ついに最終章を迎えた。

 第1作『GODZILLA 怪獣惑星』では人類の苦難の日々と圧倒的な力を持つゴジラの驚異、第2作『GODZILLA 決戦機動増殖都市』ではその力に対抗できるメカゴジラの活躍と、そこから生まれる新たな問題が描かれた。そしてこの第3作『GODZILLA 星を喰う者』 は、ついにゴジラシリーズのなかでも人気と戦闘能力ともに最高クラスの怪獣「ギドラ(キングギドラ)」がゴジラに襲いかかる。

 前2作では秘密のベールに隠されてきたいくつもの疑問が、この最終作によって明らかになることで、本シリーズは、ついに全体を通してしっかりとした評価が可能になった。ここでは第3作を中心に、本シリーズがゴジラ作品としてどうだったのか、そして何を描いていたのかを明らかにしていきたい。

怪獣バトルを忌避した前衛性

 まず、本シリーズが特徴的なのは、『魔法少女まどか☆マギカ』などで話題を集めた虚淵玄(うろぶち・げん)脚本による、いままでの実写作品とは一線を画す、設定の異様な作り込みである。

 核実験などの環境汚染によって、ゴジラを含めた数々の怪獣が出現した地球。人類の一部は半世紀にわたり逃げ続け、同じく怪獣の脅威にさらされていた二つの異星人種「エクシフ」、「ビルサルド」たちとともに宇宙船に乗り込み、長い旅の果てに、永住するための新たな惑星に到達するところから第1作『怪獣惑星』がスタートする。だが運の悪いことに、20年以上の時間をかけてたどり着いた惑星は、人類には居住の難しい環境であることが判明。議論の末、人々は地球に帰還することを選択することになる。

 相対性理論では、高速で移動すると時間の流れが変化するといわれる。人類が再び地球に戻ってきたときには、なんと地球上では2万年の月日が過ぎていた。これだけ時間が経てば、あのおそろしいゴジラとて死滅しているかもしれない……。しかし、その望みは、地上からの高エネルギー反応の検出によって無惨にも打ち砕かれる。やはりゴジラは生きていたのだ。幼い頃にゴジラの襲撃によって両親が死亡したことで恨みをつのらせていたハルオ・サカキ大尉は、ゴジラを倒す新戦術を立案。ここから人類とゴジラの新たな戦いが始まる……。

 第1作では、ゴジラとの戦いが開始されるまで、出来る限り簡潔に説明しても、ここまでのややこしい段取りがある。この回りくどさに加え、SFががっちり組み込まれた内容を理解するのに、最低限の科学的知識が求められる。この意味において本シリーズは、純粋に怪獣バトルを楽しみにしているような子どもの観客に照準を合わせていないことが分かる。実際、既存のシリーズが魅力にしていたはずの、プロレスのような怪獣バトルそのものが、本シリーズではほとんど描かれていないのである。

 この発想は、ある意味前衛的だとすらいえよう。アニメーションでゴジラ作品を制作するとなれば、多くの観客が期待するのは、実写では表現しにくい荒唐無稽な描写や展開であろう。だがここでは、むしろ実写シリーズの多くの作品よりも単純なアクション部分が少なく、物語は暗示に満ちて理屈っぽく難解なのだ。本シリーズを楽しめないという声も聞くが、そういう観客がいるのは、当然といえば当然であろう。

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