趣里が語る、女優の仕事と断念したバレエの夢 「後悔っていうのは絶対になくならないのかな」

「1つ1つ生半可な気持ちではもちろんできない」

ーー今回も踊りの場面がありましたが、こんな綺麗なシーンがあるかと見とれてしまいました。

趣里:踊りをやっていたということは表現のうちの1つだから、「踊る」というト書きに対して自分なりの表現ができるのかなと思います。

ーー脚本には「踊る」とだけ書かれていたんですか?

趣里:「ゆらゆらと踊り出す」って書いてありましたね。振り付けは自分でつけました。

ーーエンターテインメントに励まされてから、様々な作品に出演して、芸術と対峙する姿勢は変わりましたか?

趣里:自分が今度は舞台の上に立つと、周りのスタッフさんや相手役の方からもらうものがすごく大きくて、1人でここに立っているのではないっていうことを実感します。それまでは、映画を観ていても、カット割も何も分からず、ただただ「すごい世界だな」とは思っていたんです。作品を観ているとこの人の芝居はすごいなって思ったりしますよね。でも、お芝居がすごいなと思わせるには、役者はたくさんの努力が必要で、その上色々なことを考えてくださる周りのスタッフさんがいらっしゃるということは、身をもって感じました。1つ1つ生半可な気持ちではもちろんできないです。

ーー作品が、誰かの糧になるかもしれませんし。

趣里:誰かの糧になってほしくて、作品それぞれの中のポジションを担おうと思っているタイプです。求められる方向性に、あわせていきたい。その時のキャラクターを考えて、自分にあるものや、例えなくても、もし自分だったらこういう感情だな、というのを考えて自分と役を近づけていこうとしています。

ーー今回の寧子は共感できるポイントが多いと言っていましたが、自分と正反対の役を務めるときは?

趣里:幽霊の役もありますし、何万年も生きていて、人間の生き肝を食べて生きている怪物役とかもやりました。でもなんかわかる部分があるんです。だから共通点を探すし、なくても面白いと思えたら気持ちは寄り添えます。自分の心が離れないように興味を持つようにはしています。

ーー趣里さんは、舞台・ドラマ・映画と様々な場所で活躍されていますが、それぞれで表現方法は変わるのですか?

趣里:舞台は生ものでお客さんの反応がわかるし、稽古期間も1か月くらいあり、いいものを見せるために日々変化できます。でも映像は1回撮ったらそれが残る。生の緊張感と、一発勝負の緊張感の違いは感じます。

ーー今回16mmフィルムでの撮影だったので、さらに緊張感が増したのではないでしょうか?

趣里:もちろん16mmのカメラを見たことはあったのですが、今までやったことがないから16mm撮影の実感がなかったです。フィルムで映像を撮るっていうのは初めてだったので、興味の方が強かったです。フィルムチェンジや、チェックの仕方も違うし、現場でチェック用の映像とかも見るタイプじゃないんですけど、簡単に見られないのがかえって面白かったです。でも、田中哲司さんが、「緊張するよ。NG出すとお金のチャリンチャリンっていう音が聞こえる」っておっしゃっていて、緊張しました。

ーー作品が持つ冷たさ、切なさ、愛おしさを、フィルムがうまく表していたと思います。

趣里:この作品に出演して、SNSが発達した今だからこそ、人に対する思いや、逆に向こうが何を思っているんだろうっていうことを、より考えるようになりました。家族や恋人だけじゃなくて、何をするのでも、人と一緒に歩んでいくものじゃないですか。なので、現代に生きてちょっと疲れちゃったりしたら、1人じゃないよって、この映画で思ってもらえたらうれしいです。

ーー本作をきっかけに各々の寧子を打ち明けあって、多くの人が肩の荷を下ろせるといいですね。

趣里:「こういう子、嫌だな」と思う人もいるかもしれないし、苦しくなっちゃって嫌悪感を抱いちゃう人もいるかもしれないけど、何かを感じていただけるだけで充分です。

(取材・文・写真=阿部桜子)

■公開情報
『生きてるだけで、愛。』
新宿ピカデリーほかにて公開中
出演:趣里、菅田将暉、田中哲司、西田尚美、松重豊、石橋静河、織田梨沙、仲里依紗
原作:本谷有希子『生きてるだけで、愛。』(新潮文庫刊)
監督・脚本:関根光才
製作幹事 :ハピネット、スタイルジャム
配給:クロックワークス
(c)2018『生きてるだけで、愛。』製作委員会
公式サイト:http://ikiai.jp

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<応募締切>
11月19日(月)

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