『まんぷく』内田有紀の「ありがとう」に込められたもの 朝ドラヒロインは“別れ”からどう立ち直る?

 福子(安藤サクラ)が萬平(長谷川博己)に頼んだ幻灯機の演出もあり、咲(内田有紀)の結婚式は実に華々しかった。自分のことのように結婚を祝福してくれる福子に対して、咲は「ありがとう」と口を動かす。第1週から姉妹のそんな心温まるシーンを見ることができ、まさしく“まんぷく”に感じたものだった。

 ところが、翌週の『まんぷく』(NHK総合)で咲の口から出てきた「ありがとう」はあまりにも切なく、胸を締め付けられた。結核はあっという間に咲の体をむしばんでいったのだ。「福子、お母さん、ありがとう……」。病床でこう呟いたのち、咲の人生は幕を閉じた。

 朝ドラのヒロインはいつだって七転び八起きの連続である。この上ない幸せが訪れたかと思えば、壮絶な苦難が降りかかる。そして、しばしばその“苦難”の一つに、“近しい者の死”がある。

 たとえば、昨年放送の『わろてんか』でも同様に放送間もなくその“死”が描かれた。ヒロインの藤岡てん(葵わかな)の兄・新一(千葉雄大)は、自身のぜんそくのこともあり、同じように苦しむ人を救いたいという思いから薬学の道を志す。ところが皮肉なことに、第2週には持病のぜんそくが悪化し、てんは新一という存在を早々に失う。

 しかし、新一はある言葉を残してこの世を去っていった。「虫も動物も笑わへん。人間だけが笑える」「つらいときこそ笑うんや、みんなで笑うんや」。この“笑い”にまつわる新一の渾身のメッセージは、その後のてんの人生に少なからず影響を及ぼしていたのかもしれない。実際、てんはまさしく“笑い”の世界を人々に伝えていくことになる。

 死はヒロインにショックをもたらす。『まんぷく』では、咲の死後、普段通りにホテルの仕事に精を出そうとする福子であったが、同僚の恵(橋本マナミ)もどこかいつもとは違う彼女の姿を感じ取る。父親がいなくなった分まで家族をフォローしてくれた咲。だからこそ、咲には真一(大谷亮平)との幸せを存分に享受し続けてほしかった。それだけに、福子の悲しみはひとしおだ。

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