平沼紀久監督が語る、『DTC-湯けむり純情編- from HiGH&LOW』制作秘話 「DTCだからこそ“外に出す”ことができた」

パンツの色にまでこだわりました


ーー温泉、人情物、ミュージカルとパーツが組み合わさっていったのですね。では今回重要な役である、かみしも温泉の面々のキャスティングの理由も聞かせてください。

平沼:まずはミュージカルシーンのために、歌を歌える方を探していました。駿河太郎くんとはドラマ・映画『荒川アンダーザブリッジ』で共演していて、その時に2人で「また一緒にやりたいよね」といいながらも、これまでそういった機会がなくて。「今回は監督と俳優の関係だけど、一緒にやりたい」と声をかけたところ、快諾してもらえました。メグミ役の新井美羽ちゃんはキャスティング担当の方からすごく勧めてもらって、いざ会ってみたら「この子だな」と一発で決まりました。マリさん役も悩んでる時に「笛木さんどうですか?」っていうお話をいただいたんです。お父さん役は、ずっと一緒に俳優部でやってきた小林且弥という男がいるんですけど、彼に頼むことを心に決めていたんです。これで最高の家族になりました。

ーーそこにSMG、達磨ベイビーズというSWORDの新世代たちも、様々な役割でストーリーに絡んでいくのも見どころですね。

平沼:そこはやっぱり『HiGH&LOW』のスピンオフなので、DTCにフォーカスを当てるのであれば、同じく次世代を背負って立つであろうSMGと達磨ベイビーズを出したいと考えました。でもただ出すだけでは面白くないので、彼らそれぞれにも脚本を書いたんです。それが『週刊少年マガジン』に掲載されているマンガ(平本アキラによる「「DTC 特別編 前編・後編」」)にも出てきますよ。

ーーまだ前編しか拝読していないのですが(取材時は10月頭)、DTCのメンバー内でひたすらケツを蹴り続けるギャグ満載のエピソードから、そんな展開に……?

平沼:前・後編ケツキックの話なんですけど(笑)。後編にSMGと達磨ベイビーズが旅に出る理由が少し明かされます。でもそれも一部だけなので、今回書いた2つの脚本も、いつかどこかでやりたいですね。

ーーそれは楽しみです。今回、『HiGH&LOW』ではおなじみのCLAMP先生だけでなく、平本アキラ先生(代表作は『監獄学園』、『アゴなしゲンとオレ物語』など)によるスピンオフマンガが掲載されています。

平沼:ずっと前から、劇場版『ワンピース』みたいに、映画上映時に「エピソードゼロ」っていうマンガを配りたいと思っていて、まぁ今回も実現はしなかったんですけど。どうしても前日譚をマンガにしたいと講談社の編集者と話していたところ、「平沼さんが脚本を描き下ろしてくれるのであれば」と、トントン拍子に話が進み、「作画は平本アキラさんでどうですか?」と提案してもらったんです。HIROさんもDTCならギャグタッチの人がいいと言っていたこともあり「『アゴなしゲンとオレ物語』! 是非!」と、いざお会いすると、平本先生から「『HiGH&LOW』全部観ました!」と逆に質問責めにされるという(笑)。

ーー『HiGH&LOW』はマンガ家、小説家の方の間でも人気が高いですよね。

平沼:僕もマンガは大好きなんですけど、そしたら、そこに僕の兄貴分であるHAKUEIが呼んでもないのにやってきて……(笑)。「平本先生はすごいんだぞ!」と四方八方から浴びせられるという。(※平沼氏とヴィジュアル系バンドPENICILLINのボーカリストであるHAKUEI氏は、マンガ家の古屋兎丸氏とともに「漫画兄弟」というユニットを結成している)それはさておき、その後、平本先生にも試写を観ていただいて、スピンオフのイメージもどんどん固まっていきました。先生からも「是非(スピンオフを)描きたいです」と言ってもらって、嬉しかったですね。

ーーそこでまた新しい『HiGH&LOW』の世界が広がったといえますね。また、本作は小ネタもすごいですね。

平沼:SMGのパンツの色にまでこだわりましたからね! 正直衣装よりも考えましたよ(笑)! 他にも尾沢が乗っている車のナンバープレートが「いいこと」だったり、お父さんとの思い出の車のナンバープレートは公開日の数字だったりするんですよ。温泉の名前も『HiGH&LOW』のイメージでつけていますし。

ーー舞台になる温泉街は「かみしも温泉」、かみ(上)、しも(下)で、『HiGH&LOW』と! 他にも、これまでナレーションとして声のみの出演だった立木文彦さんが、DTCが立ち寄るスナック「風下」のオーナーとして登場し、チハルと共にメタなギャグを入れくるシーンのインパクトたるや……。

平沼:もはや『HiGH&LOW』=立木文彦さんの声みたいなイメージもあるじゃないですか。どうにか立木さんを出したいなっていうのは以前から思っていたので、今回絶好の機会だと、ダメ元で「出てください」とアタックしたら、出て貰えることになったんです。そこで配役を考えて、最初はやたら良い声のトラックの運転手というアイデアもあったんです。DTCたちも「どっかで聴いたことのある声だな?」みたいになる……的な(笑)。でも最終的にスナックのオーナーに落ち着いて、じゃあスナックが舞台だったらカラオケの前振りもやってもらおうという話になり。

ーーそれは何故ですか?

平沼:僕がどうしても不倫デュエットソングを作りたかったんです!

ーーダンとスナックのホステス、アキがデュエットする『修羅BANBAN』ですね。たしかにカラオケの画面の作詞クレジットにも平沼さんのお名前はありました。そこもネタが細かい。

平沼:僕はスナックによく行くんですよ。そこで女性と何か歌うとなると、だいたい『ロンリーチャップリン』や『男と女のラブゲーム』になるんですね。歌いながら距離感が縮まるようなデュエットソングって、その時代で止まってるように思えるんです。

ーー確かに、そういう気軽に男女が歌えるデュエットソングは更新されていない印象がありますね。

平沼:コブクロさんと絢香さんの『あなたと』みたいにすごい歌い上げ系の歌はあるけど、やっぱり少ないですよね。だから男女の距離が縮まる、不倫カップルが一線を超えるような歌を作りたかったんですよ!

ーーでは、実際にカラオケで歌える日も……?

平沼:はい、DAMさんで歌えるようになります。

ーーそれは楽しみです。しかし、『修羅BANBAN』そんな熱い思いがあったとは全く予想してませんでした。

平沼:めちゃくちゃ熱い思いがありますよ!

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