浅野忠信、小栗旬、柳楽優弥……若手女優を支える主役級キャストたちの名演に注目

 そういった見方をすると、新人小説家を演じた柳楽も出番は短いながらも社会の一部分を体現し、平手を支えている。『ゆとりですがなにか』(2016・日本テレビ系)などをはじめ、たびたび問題児キャラを演じる彼だが、本作でもその存在感はピカイチ。彼の言動・行動の異常さもまた本作を盛り上げている。柳楽が演じるこの役は、響と“最も似ているようで、決定的に違う”という人物。彼の演技があってこそ、響の“ヤバさ”や“ホンモノ感”が浮き彫りになる。そして何より、北川、小栗、柳楽をはじめとする脇役陣の見事なリアクションがあるからこそ、響の魅力は引き立つのだ。

 「4回泣けますーー」というキャッチコピーが印象的な有村主演作『コーヒーが冷めないうちに』では、若手では波瑠と林遣都、そして吉田羊に松本若菜、さらには薬師丸ひろ子や松重豊といったベテラン勢が脇を固めている。主人公・時田数(有村)が働く、とある喫茶店を舞台にした物語なだけに、客を演じるこれらのキャスト陣から有村は終始囲まれる形となる。

『コーヒーが冷めないうちに』(c)2018「コーヒーが冷めないうちに」製作委員会

 この立ち位置での有村は、みなを見守る存在だ。キャスト陣の並びを見れば、誰も彼もが手練の演者であることはお分かりだろう。喫茶店という限られた空間で進行する物語だからこそ、個性豊かな彼らが賑やかな彩りを添え、有村演じる数を中心にしながら、3つの「泣ける物語」を展開させていく。

 数とは、どちらかといえば受け身な人物。この3つの物語を彼女は見守り、やがて4つ目の物語に自ら身を投じていく。彼女にとって最重要人物を演じる石田ゆり子や、メインキャストとしては最年少である伊藤健太郎の有村との並走も見事である。

 今後は齋藤飛鳥や、吉岡里帆、門脇麦、川栄李奈といった若手女優が中心に立つ作品が次々と公開される。彼女らの奮闘だけでなく、それらを支える者たちの存在にも目を光らせていきたいものだ。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。

■公開情報
『響 -HIBIKI-』
全国東宝系にて公開中
原作:柳本光晴『響~小説家になる方法~』(小学館『ビッグコミックスペリオール』連載)
監督:月川翔
脚本:西田征史
出演:平手友梨奈、北川景子、アヤカ・ウィルソン、高嶋政伸、柳楽優弥、野間口徹、小松和重、黒田大輔、板垣瑞生
配給:東宝
(c)2018映画「響 -HIBIKI-」製作委員会 (c)柳本光晴/小学館
公式サイト:http://hibiki-the-movie.jp/

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