柄本佑が体現する、消えゆく夏の儚さ 『きみの鳥はうたえる』は新たな代表作に

 かねてより熱狂的な映画ファンとして広く知られている俳優・柄本佑。全国公開規模の大作映画に数多く出ながら、映画ファンの熱い支持を受けるパーソナルな映画にもコンスタントに出演を重ねてきた。主演最新作『きみの鳥はうたえる』は彼の新たな代表作となったのではないだろうか。

 柄本の映画初出演にして初主演作は、2003年公開の黒木和雄監督作『美しい夏キリシマ』。1945年の霧島の大自然を舞台に、戦時下を生きながらえている少年の空虚な心を見事に演じ、多くの新人賞に輝いた。それからは、李相日監督作『69 sixty nine』(2004年)や『チェケラッチョ!!』(2006年)、『僕たちは世界を変えることができない。』(2011年)といった若手俳優が集結した作品に名を連ね、『犯人に告ぐ』(2007)や『空気人形』(2009)、近年は『64-ロクヨン-』(2016)や『追憶』(2017)など、その年を代表する大作でも強い印象を残し、これらの出演本数はかなりの数にのぼる。

『素敵なダイナマイトスキャンダル』(c)2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

 その一方で、若松孝二監督と『十七歳の風景〜少年は何を見たのか』(2005)で、石井隆監督とは『フィギュアなあなた』(2013)、そして今年は冨永昌敬監督と『素敵なダイナマイトスキャンダル』でと、強烈な作家性を放つ監督たちと、主演俳優としてタッグを組んできた。さらには、限定的に公開された黒沢清監督による短編作品『ビューティフル・ニュー・ベイエリア・プロジェクト』(2013)や、自らがメガホンを取った『ムーンライト下落合』(2017)、日本・ポルトガル・アメリカの合作による『ポルトの恋人たち 時の記憶』も公開が待たれる。

 連続ドラマではあまり見かけないようにも思えるが(単発ドラマには多く出演)、NHKの連続テレビ小説『あさが来た』への出演や、『コック警部の晩餐会』(2016・TBS系)では連ドラ初主演を果たしている。やはり、活動の場の中心を映画に据えた上での、スケジュールの問題などなのだろう。

 そんな柄本のことは、まさに“映画人”と呼びたくなる。そのことに異論はないのではないだろうか。彼はトークショーなどにも多く登壇し、好きな監督や作品への想い、自身が参加した現場での情熱的な日々の興奮を口する姿をよく見かける。彼が映画について語るときの劇場内の空気は和やかで、それでいて熱っぽく、そして笑いが絶えない。一度でもその場に立ち会った方ならば、そんな印象を持たれるではずである。

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