『MEG ザ・モンスター』監督が語る“サメ映画”の醍醐味 「観客に安心感を与えないことが大切」

「ジェイソンは一緒に仕事をする仲間として最高なんだ」

ーー今作の場合、メガロドンの描写が非常に重要だったかと思いますが、登場シーンや人間を襲う描写など、しっかりと恐怖として描かれていたのも印象的でした。

タートルトーブ:どのモンスターもそれぞれ特有の個性があるよね。そして、モンスターを倒すために人々は学習しなくてはならない。サメという生き物は、水中にいないとダメだよね。一方で、人間にとって水に入るということは、非常に危険な状態を意味する。そして、陸に上がると非常に安心感を得られる。この常識をうまく利用して、観客に安心感を与えないことが大切だったんだ。この作品のクリーチャーであるメガロドンは、僕としても正確に描きたかったし、存在した形をリアルに再現したかった。参考になったのは『ジュラシック・パーク』。あの作品でいろんなことを学んだよ。

ーー具体的にどういうことを?

タートルトーブ:どういった状況で、どういったものに対峙するのか、それを観客にうまく伝えていかなければいけないということだよ。それを分からずして、恐怖を感じてもらうことはできないからね。ただ、今回違ったのは、誰しもが恐竜のことを知っているけれど、メガロドンはそこまで知られていないということ。『ジュラシック・パーク』の場合はみんなが恐竜のことを知っているという前提で話が進んでいると思うけれど、今回はメガロドンという知られていない生き物の話だったから、とてもリサーチが必要だったね。

ーーメガロドンの描写でこだわったポイントは?

タートルトーブ:かつて実在したメガロドンという生き物をリアルに表現することだね。皮膚に関しては、いわゆる現代のサメのようなものではなく、古代のものを再現しているんだ。あとは動きも重要だった。メガロドンは現代のサメよりも動きがゆっくりだったと思うんだ。一般的には、動きがゆっくりだったら恐怖感が薄れてしまうと感じるかもしれないけれど、必ずしもそうではない。現実的なスピードで恐怖も持ち合わせているというバランス感覚が非常に重要で、そこはかなり意識したよ。ただ、幸運なことにこの作品はフィクションだ。現代にメガロドンは存在しないわけだし、僕たちにはいろんな選択肢があった。だから、僕たちの中でメガロドンを作り上げて、映画として肉付けしていったんだ。

ーー主演のジェイソン・ステイサムは、本作ではアクションはもちろん繊細な演技も見せていたように思います。役作りにおいて、彼とはどのようなコミュニケーションを取ったのでしょうか?

タートルトーブ:ジェイソンは一緒に仕事をする仲間として最高なんだ。思いやりもあって、ユーモアもある。いつも準備万端で現場に来て、喜んで課題をこなしてくれるんだ。台詞ややるべきことはもちろん分かっているし、肉体的な部分で何が必要かということも分かって準備をして来てくれる。ただ、今回は彼が今までやってきたアクションとはちょっと違う。カーアクションも人との取っ組み合いもない。そういう設定の中でどう作品に取り組むのか。そこで重要になったのが、僕とジェイソンとの信頼関係だったんだ。僕はその信頼感を得ることができたから、普段通りリハーサルをしなくてもうまくできるなと想定したよ。

ーー役者としてのジェイソン・ステイサムの素晴らしさも教えてください。

タートルトーブ:僕が彼をアクションスターとして評価している部分は、傲慢さを全く出さず、守る姿勢も持っているところ。ただいいところを見せようとしてやるのではなく、謙遜しているんだよね。エゴを見せつけたり、自分のやり方を押しつけたりする人ではないんだ。労働者の在り方を倫理観をもって演じることができる人だね。彼がそういう人だからこそ、この作品はここまで成功したんじゃないかな。映画には、敬意を表せて、信頼もできるキャラクターが必要なんだ。特にこの作品は、本当にクレイジーなアイデアてんこ盛りの映画で、そういうキャラクターがいないと説得力が生まれない。役者自身が状況を把握して、信じて取り組まないと、観客はついてこなくなっちゃうからね。

(取材・文=宮川翔)

■公開情報
『MEG ザ・モンスター』
9月7日(金)丸の内ピカデリー、新宿ピカデリーほか全国公開
監督:ジョン・タートルトーブ
原作:スティーヴ・オルテン(『THE MEG』)
撮影:トム・スターン
美術:グラント・メイジャー
出演:ジェイソン・ステイサム、リー・ビンビン、レイン・ウィルソン、ルビー・ローズ、ウィンストン・チャオ、ペイジ・ケネディ、ジェシカ・マクナミー、オラフル・ダッリ・オラフソン、ロバート・テイラー、クリフ・カーティス、ソフィア・シューヤー・ツァイ、マシ・オカほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
2018年/アメリカ/カラー/デジタル/英語/113分/原題:The Meg/映倫区分:G
(c)2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., GRAVITY PICTURES FILM PRODUCTION COMPANY, AND APELLES ENTERTAINMENT, INC.
公式サイト:www.megthemonster.jp

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