実は隠れた名脇役 『半分、青い。』の“電話”は永野芽郁と佐藤健を繋ぐ重要な役割?

 これでもかというくらい一緒にいる鈴愛と律。それでも、何度か離れ離れになる瞬間はあった。学生時代で言うと、律の大学受験期。鈴愛は律から、受験勉強に専念するために「前みたいに遊べなくなる」と第20話で告げられる。そう言われたものの鈴愛は、律の家に相変わらず押しかけていたので、距離感はあまり変わらなかったのだが、会う機会があったのにも関わらず、第23話で律は鈴愛に志望校変更を打ち明ける際、電話で告げることを選択する。

 その理由は、鈴愛がショックを受けるかも知れないという律のちょっとした気遣いだった。狭い梟町全体の期待を背負った気になっていた律は、東大から京大へ志望校を変えることに高いハードルを感じていたのだろう。どちらも名門とはいえ、最初に掲げた目標を変更するのは、エベレストくらい高いプライドを持つ律にとっては少ししんどいこと。親しいからこそ失望させたくないという律の優しさと臆病さが、あの電話のシーンには表れていた気がする。(ドアノブ、トースターなんでもカバーを付けたがる昭和あるあるに沿って、鈴愛の家の電話に花柄のカバーがついているのは芸が細かい)

 「これは景気づけの電話だ」。鈴愛だけでなく、律の将来に大きすぎる期待をかける母の和子さん(原田知世)にも、志望校変更を伝えなければならなかった律。あまり感情を顔に出さない律とはいえ、さすがに母の期待を裏切るのは怖かったのだろう。それまでは鈴愛が一方的に律を頼りにしていたように見えたものだが、ここぞというときに鈴愛の声が聞きたくなるというのは、やはり律も鈴愛に寄りかかっているようにも見える。

 それから高校を卒業し2人は別々の環境で生活を始めるものの、電話は律を呼び出す“あの笛”の役割も担い、鈴愛と律の関係はまだまだ続いていく。秋風ハウス時代の第52話では、清(古畑星夏)との再会の喜びを伝えるために律が鈴愛に電話をかける。しかし鈴愛は律の話そっちのけで、正人(中村倫也)をデートに誘うと宣言し、切った。今ではLINEやメールがあるからこそ当たり前になった小さな報告までをも、鈴愛と律は電話でわざわざ交わし合う。たとえそれが噛み合っていなかろうと、律と鈴愛の共依存ともとれる関係を繋いでいたのは、やはり電話の力が大きいのだろうと思う。

 しかし、鈴愛と律には一度大きな別れが訪れる。鈴愛が清に嫉妬心から、「律はわたしのものや」と言ったことで、律はもう幼なじみのままではいられないと別れを告げたのだ。それから5年後、2人には一度プロポーズ事件という大きな出来事が降り掛かったものの、今までのような距離には戻れず、次に律と連絡を取ったのは、携帯電話が薄くなった頃だった。

 漫画家としてスランプに陥り、締め切りの朝を迎えた第79話の鈴愛。髪はボサボサ、目の下にはクマ、描きかけの原稿を前に呆然としていた鈴愛の携帯に着信音が鳴る。律のタイミングは鈴愛からのSOSを受け取ったのか、それともやはり第78話で鈴愛が大阪の律の家を訪れたのがバレていたのか……。真相は分からぬが、この電話がきっかけで鈴愛と律の止まっていた時計は、ゆっくりと歯車を回し始める。

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