大内雷電の『ハン・ソロ』評:特撮オタクが見た『スター・ウォーズ』の未来と可能性

オリジナルキャストの是非

 次に控えるオビ・ワンのスピンオフはユアン・マクレガーが主演を務めるという報道が出ているが、オリジナルキャストを使わなくても『ハン・ソロ』は十分健闘していた。というのもシリーズの人気を長続きさせるにあたって、オリジナルキャストの積極的な再登場というのは、そこまで重要ではないと言えるからだ。日本特撮における仮面ライダーとウルトラマンの例から考えてみたい。

 仮面ライダーには、歴代過去作品をパラレルワールドに置き換えて、多数のキャストの変更を行った『仮面ライダーディケイド』という10周年記念作品がある。例えばオダギリジョーが演じた仮面ライダークウガは、『ディケイド』では村井良大が務めている。始めこそ批判はあったけれども、長期的展開として見た時にこのオリジナルキャストに頼らない作品作りは功を奏し、これ以降の「第二期平成ライダー」の圧倒的な隆盛に繋がった。

 一方この3年前、ウルトラマンはかつて昭和時代に出演していたオリジナルキャストを新シリーズ『ウルトラマンメビウス』に登場させ、オールドファンからの支持を集め高い人気を得た。昭和期のウルトラシリーズの直接的続編として作られた作品であったが、この手法で演出されたのは「お祭り感」であった。結果これ以降のシリーズは、旧世代のキャラクターに依存するものとなってしまった面が強い(ディケイドはその辺を上手く参考にしたと思う)。近年のウルトラマンシリーズの盛り上がりは、そこからの脱却を目指し、新たな世代のヒーローをブランディングした成果である。

 続三部作のように地続きのストーリーならまだしも、オリジナルキャストを使うというのは、祝典的効果としてその時は熱く燃えるものの、その炎は続きにくい。たとえハン・ソロという世界的な人気キャラクターでも、新しい形でアプローチをするのは、今度のスピンオフ展開を見据えたシリーズを長続きさせるにあたって重要なこととなっているのだ。

 今回の『ハン・ソロ』は、世界的に大きな賛否両論を巻き起こしながらも、新たなるキャスト、新たなる展開で、『スター・ウォーズ』の未来とその可能性を充分に見せてくれた。この作品は、また次作の『スター・ウォーズ・ストーリー』が公開された際、さらに意味のあるものとなるだろう。そう、『スター・ウォーズ』シリーズ最大の魅力は、その「サーガ」にこそあり、である。この先10年、20年、一生涯続く我々の“スター・ウォーズライフ”に向けて、『イイ予感がするぜ!』

(取材・構成・写真=阿部桜子)

■大内雷電
特殊ベーシスト。バンド『THE 夏の魔物』、特撮楽曲カバーバンド『科楽特奏隊』所属。特撮オタク。ゾイドと3DO REALソフトの所有数はたぶん音楽業界一。今年は楽器を弾く回数より文筆業やトークイベントの方が多い、全力で道を踏み外し中のミュージシャン(暫定)。最近の寄稿は『映画秘宝』『特撮秘宝』、映画『レディ・プレイヤー1』公式コメントなど。ロックフェス『夏の魔物2018』9月2日東京・お台場、9月9日大阪・味園ユニバースで初の二大都市開催。来てくれたら喜びます。

■公開情報
『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』
全国公開中
監督:ロン・ハワード
製作:キャスリーン・ケネディ
出演:オールデン・エアエンライク、ウディ・ハレルソン、エミリア・クラーク、ドナルド・グローヴァー、ヨーナス・スオタモ、ポール・ベタニー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)2018 Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.
公式サイト:https://starwars.disney.co.jp/movie/hansolo.html

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