「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメ映画は『ラプラスの魔女』

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、リアルサウンド映画部の薩摩侍こと折田が1本のイチオシ作品をプッシュします。

『ラプラスの魔女』

 ゴールデンウィークもいよいよ後半戦へ。前半戦では、全世界待望のマーベル映画最新作『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』に、人気のマンガ原作映画『となりの怪物くん』『ママレード・ボーイ』、名匠ジェームズ・アイヴォリーが脚色を担当しアカデミー賞をも賑わせた『君の名前で僕を呼んで』や、カンヌ映画祭最高賞受賞作である『ザ・スクエア 思いやりの聖域』などが一挙公開された。

 後半戦で封切られるのは、コーエン兄弟が脚本に参加しジョージ・クルーニーがメガホンを取った『サバービコン 仮面を被った街』に、ソル・ギョングとイム・シワンが共演した韓国ノワール『名もなき野良犬の輪舞』など、こちらも強力な布陣で追い風となりそう。そんな中で封切られた『ラプラスの魔女』は、東野圭吾の同名小説を原作に、櫻井翔、広瀬すず、福士蒼汰といった豪華キャストを迎え、三池崇史監督がメガホンを取った作品だ。

 主役の櫻井が演じるのは、地球化学の専門家で大学教授の青江修介。青江は、とある雪山で起きた硫化水素中毒死の事故調査を警察から依頼されるが、彼は事件性については否定する。しかし数日後にまったく別の場所で同じような事故が起こった上に、被害者が顔見知りであったことが判明する。そこで青江は、もしもこれを事故ではなく、殺人事件と仮定するのなら、犯人は“その場所で起きるすべての自然現象を、あらかじめ予測していた”ことになるのだと思い当たる。未来を予見する知性=「ラプラスの悪魔」など存在するはずがないと、青江は行き詰まるが……。

 櫻井が三池監督とタッグを組むのは、2009年の映画『ヤッターマン』以来。あの作品とはまったくテイストが異なるものの、本作のシリアスなドラマ展開の中でも、櫻井のどことなくコミカルに感じる演技が心地よい。知的でユーモア溢れるキャラクターは、小難しい科学的な題材や、東野作品特有の重厚ながらもエンタメ性の高い作品に相性がいいのだ。

 ネタバレになるため、どこまで触れていいのか悩ましいところ。ひょんなことから事件にのめり込むハメになり、やがてたどり着く“慟哭の真実”的な展開には、やはり『ガリレオ』シリーズに連なる、『容疑者Xの献身』あたりを思い出したりする方も多いのではないだろうか。しかし「ミステリー」という一本の柱を軸にしながらも、サスペンスフルに綴られていく家族をめぐるドラマは必見だ。とはいえ、三池作品。クライマックスに訪れる、“真実との対峙”の場面などはスペクタクル性の強いものに仕上げられており、誰もが手に汗握ること必至だろう。

 このGWは、大挙する新作映画だけでなく、ほうぼうで開催中の特集上映も見逃せない。シネマヴェーラ渋谷では「映画史上の名作16」と銘打ち、フランク・キャプラやマックス・オフュルス、ジャック・ターナーなどの作品を特集上映。角川シネマ新宿では「大映男優祭」として市川雷蔵や川口浩の出演作が特集上映され、彼らスターの魅力を堪能することできる。神保町シアターでは、「小津安二郎」特集から「にっぽん家族の肖像」特集へ。映画を通して、さまざまな家族のかたちを覗いてみるのはいかがだろうか。

 さらに高円寺のアンノウンシアターでは、「赤瀬一紀映画祭」なる短期の特集上映が開催される。若き“どろだんご職人”の奮闘(!?)を描いた『どろだんご』と、連日2本立てでの上映で、PFF(ぴあフィルムフェスティバル)にて4冠受賞の『したさきのさき』や、カンヌ映画祭のシネフォンダシオン部門に正式招待された『溶ける』、MOOSIC LAB2016のアイドル映画『神宿スワン』など、新鋭の監督たちによる、なかなか観ることのできない瑞々しくも熱い作品がラインナップされている。出演者陣をはじめとし、全国順次公開が展開されている『見栄を張る』の藤村明世監督や、『聖なるもの』が好評上映中の岩切一空監督などによるトークショーも上映後には実施されるようだ。

 ゴールデンウィーク後半戦! あなたの一本を、映画館に探しに行ってみてはいかがだろうか。

■公開情報
『ラプラスの魔女』
全国東宝系にて公開中
出演:櫻井翔、広瀬すず、福士蒼汰、志田未来、佐藤江梨子、TAO、玉木宏、高嶋政伸、檀れい、リリー・フランキー、豊川悦司
原作:東野圭吾『ラプラスの魔女』(角川文庫刊)
監督:三池崇史
脚本:八津弘幸
(c)2018 「ラプラスの魔女」製作委員会
公式サイト:http://laplace-movie.jp/

関連記事