中谷美紀、玉木宏らの演技が太い柱に 働く女性が共感『あなたには帰る家がある』の“あるある”

 佐藤家のリビングの隅には秀明のコレクションの映画グッズが置かれている。壁にはアキ・カウリスマキやキム・ギドク作品のピンナップが、棚には『ゴッド・ファーザー』やイングマール・ベルイマンのDVDが並ぶ。ほんの1畳ほどのこのスペースが秀明の人となりを物語る。対して『ローマの休日』で号泣し、『タイタニック』も大好きな真弓。出会ったころの回想シーンではそんなお互いの違いを新鮮に感じ、惹かれ合っていく様子が描かれた。しかし、いまやその違いはストレスでしかなくなっている。

 「結婚しなくても幸せになれるこの時代に、私は、あなたと結婚したいのです」。これは昨年話題になったゼクシィのCMのコピーだが、真弓とて独身でいるより幸せになれると想像して秀明と結婚したに違いない。でも、月日が変化をもたらした。この先、真弓はぐらつく足場に立ちながら自問することになるのだろう。この人と結婚してよかったのか、自分の選択は間違っていなかったか、と。

 冒頭からなかなかのクズぶりを見せた秀明。陰湿な目つきや表情は同じく金10ドラマの『ずっとあなたが好きだった』の冬彦さんのオマージュか、茄子田(ユースケ・サンタマリア)もセクハラ、モラハラで秀明に負けず劣らず難アリの夫。茄子田の妻で秀明の浮気相手の綾子(木村多江)も何やら裏の顔がありそう。2組の夫婦を演じる4人の役者の巧みな演技が太い柱になっている。真弓と秀明の13回目の結婚記念日は4月13日、の金曜日。圭介は予言する。「不吉だな」。初回の放送日も同日だったなんてよくできている。今後ますます不穏な空気が漂っていくことを恐れつつも楽しみにしてしまうではないか。

■古閑万希子
ライター。映画評や映画ノベライズを手掛ける。

■放送情報
金曜ドラマ『あなたには帰る家がある』
TBS系列にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:中谷美紀、玉木宏、ユースケ・サンタマリア、木村多江、駿河太郎、笛木優子、高橋メアリージュン、藤本敏史(FUJIWARA)、トリンドル玲奈
原作:山本文緒『あなたには帰る家がある』(角川文庫刊)
演出:平野俊一
脚本:大島里美
プロデューサー:高成麻畝子、大高さえ子
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
(c)TBS
公式サイト:http://www.tbs.co.jp/anaie/

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