高畑淳子の熱演光る 『となかぞ』視聴者を引き込む“ラスト10分間”の凄み
コーポラティブハウスと呼ばれる集合住宅に住む4つの家庭を描いたドラマ『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)。第6話では、各家庭それぞれが望んでいなかった“残酷な現実”が突きつけられたが、テーマとは裏腹なコミカルなテンポで物語が展開していった。
本作はそんな軽快に進むストーリーだからこそ、常にラスト10分間の涙の誘い方がうまい。これまでやんわりながらも直接的に、五十嵐奈々(深田恭子)&大器(松山ケンイチ)に子作りを推奨してきた大器の母・聡子(高畑淳子)。前回第5話のラストで聡子は、2人が不妊治療中であることをようやく察し、大器の妹・琴音(伊藤沙莉)の出産に立ち会わせたことを申し訳なく思い、頭を抱える。高畑が魅せる、おせっかいだけれど憎めない“世話焼き母ちゃん”っぷりは演技を超えた自然さがあり、毎話ベテランの風格を感じさせられる。
そして今回第6話のラストでは、子育てでてんてこ舞いになっている琴音が、ストレスと不安から、「ほんとはこんなに早く…母親になんかなりたくなかったもん……」「子供なんて産みたくなかったよ!」と、不妊治療中の奈々の前で、つい本音をこぼしてしまった。
奈々の事情を知る聡子は、琴音に思い切りビンタ。「あんたが言った言葉は、どれだけ残酷で、無神経で、ひどい言葉か……! 謝りなさい!」と涙ながらに叱る聡子の姿は、まじりっ気のない優しさがひしひしと伝わってくる。本作は、これまでにも“無知が人を傷つける”というメッセージが込められてきたが、今回“傷つけてしまった側”はどうするべきかの1つの例が示されたのではないかと思う。