『南瓜とマヨネーズ』冨永昌敬監督×臼田あさ美対談 「ツチダが抱えている感情は普遍的」

臼田「こういう状況って意外と世の中にたくさんあるのかもしれない」


――ツチダは、自分でも何をしているのかがわからないような複雑な感情を抱いているわけですが、臼田さんは演じていて、演出に疑問を持ったり、芝居に迷いが出ることはありませんでしたか?

臼田:インしたばかりの頃は、私が「ツチダはこういう人物だ」と決めつけ過ぎている部分があって、私が考えるツチダしかいなかったと思うんです。でも、キャラクターを作り上げていく過程で、私が感じた疑問をすべて冨永さんにぶつけたら、ちゃんと聞いてくれて。だからその後は、冨永さんたちの作った世界の中で、私の思うツチダでいれば良いんだって思えました。監督やスタッフとの間に、ちゃんと信頼関係があったからこそ、迷わずに演じられたというか。たとえば、この映画には、原作にはないせいちゃんとハギオの“鉢合わせ”シーンがあるのですが、わたしの考えるツチダはそんな軽率な行動はしないと思っていたんです。でも、お酒を飲んで徹夜した後だし、ハギオは相手の気持ちを考えずにグイグイくるタイプだから、そういうこともあり得るでしょうって冨永さんに言われて。実際に現場に入ったら、台本にはなかった、ハギオがどういう風にやってくるかがリアルに描かれたシーンがあって、なるほど確かにこういう状況だったら面倒くさくなって家に入れちゃうかもなぁと。そのちょっと面倒臭くなっちゃった気持ちをそのまま表情に出せば良いんだって思えたんです。お芝居って基本的に全部が嘘なんですけれど、その中でも感情的に嘘のない演技ができたと思います。

冨永:臼田さんの「この状況だったらこうなるよね」っていう諦めの感情が、生々しい情景になっていました。

臼田:元彼と今の彼が自分の部屋で鉢合わせするって、普通に考えたらありえない状況なんだけど、こういう状況って意外と世の中にたくさんあるのかもしれないと感じさせるというか。自分が経験したことではないはずなのに、若い頃にこういう苦々しい瞬間ってあったなって感じさせるんですよ。この映画で起こっていることは、全部そうですね。そういう風に感じるのは、最初に冨永さんが仰っていた「自分が何をしているのかわからない」という、誰もが抱いたことがある感覚を思い起こさせるからなのかもしれません。

(取材・文=松田広宣)

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<応募締切>
2017年11月17日(金)

■公開情報
『南瓜とマヨネーズ』
11月11日(土)より新宿武蔵野館ほかにて全国ロードショー
監督・脚本:冨永昌敬
原作:魚喃キリコ『南瓜とマヨネーズ』(祥伝社フィールコミックス)
出演:臼田あさ美、太賀、浅香航大、若葉竜也、大友律、清水くるみ、岡田サリオ、光石研、オダギリジョー
製作:『南瓜とマヨネーズ』製作委員会
制作プロダクション:スタイルジャム
配給:S・D・P
2017/93min/カラー/シネスコ/5.1ch
(c)魚喃キリコ/祥伝社・2017『南瓜とマヨネーズ』製作委員会
公式サイト:kabomayo.com

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